テル先生ありがとう! 阪神の佐藤輝明内野手(22)ら新人5選手が9日、兵庫・西宮市の用海小を「ゲストティーチャー」として訪れ、2、3年生約190人と交流した。チーム最多24本塁打を放った佐藤輝がロングティーを実演するなど、プロ野球選手の登場に児童たちは大熱狂。地元西宮での充実の2時間で初心に帰った。

    ◇    ◇    ◇

用海小での一日先生を終えた佐藤輝は、お手上げとばかりに頭をかいた。「お前誰やねんみたいなことを言われた…」。球界を盛り上げたスラッガーも、小学生相手の知名度はまだまだなのか。「これからっす! 野球を知らない子は(佐藤輝を)知らないと思うので頑張ります!」と子どもたちの洗礼に笑うしかなかった。

それでも、講師を務めた2時間の体育の授業でギュッと心をわしづかみにした。ロングティーでは、ゴムボールを金属バットで校庭の端から端まで飛ばし「ギャー!」「すげえ!」と大盛り上がり。ボールを遠くに投げて得点を競うミニゲームでは、一緒になってはしゃいだ。

「楽しむことを忘れちゃいけないというのは、今日来て思いました。しんどい時があるから余計楽しい時がある。いつまでも忘れずにやっていきたい」。佐藤家では2人の弟がいる長男。お兄ちゃんの顔になって小学2、3年生約190人と打ち解けた。

教室では佐藤輝のファンが急増した。2年生のあるクラスでは、体育直後の算数の授業が図工に変更され、この日の思い出を粘土で表現。佐藤輝のシルエットが形作られ、感謝の手紙をクラス全員が書いた。「みんな興奮しすぎて授業にならないから、授業を変えました」と担任教諭も苦笑いのフィーバーだった。

用海小は、佐藤輝の母校甲東小から約4キロ。「西宮からタイガースとかプロ野球で活躍する選手が出てきたら一番うれしい」と地元愛があふれる。「子どもたちに夢を与えるのがプロ野球の使命。そういうこともやっていきたい」と地元の子どもたちを甲子園に招待する「テルシート」創設にも意欲を見せた。その時には、「誰やねん!」なんて言われないように…。「やっぱりホームランだったり、ひと目で分かるような活躍ができたら子どもたちも喜んでくれると思うので、頑張ります!」と誓った。【中野椋】

◆阪神タイガース小学校体育授業支援事業「ゲストティーチャー」 18年のタイガースアカデミー開講に伴い、野球振興のため始まった。阪神OBのタイガースアカデミーコーチ、阪神の女子チーム「阪神タイガースWomen」の選手たちが講師となり、小学校の体育授業で技術指導やゲームなどを通して野球の魅力を伝えている。小学2年から4年が対象で、4年間で30校以上の小学校で実施されてきた。

▽阪神石井 小学生はすごく正直なんで、『この人誰?』と言われたんですけど…。テルみたいに活躍すれば小学生も知っていると言ってくれるんで、来年しっかり活躍して知ってもらえるように頑張りたい

▽阪神村上(小学生時代に阪神主催の野球教室に参加) 桜井広大さんにティーを上げてもらったのは覚えてますね。小さい頃なのでとてもうれしかった。まずは、小学生に名前を覚えてもらうところから始めていきたい

▽阪神高寺 緊張していたんですけど、小学生が明るかったので、それにつられて楽しくやれました。「甲子園見にいくね」と言ってくれたので、1軍で活躍できるように頑張っていこうと思います。

 

○…西宮市の石井登志郎市長(50)が「佐藤輝2世」誕生に期待を寄せた。用海小を視察に訪れ「興奮している子どもたちを見て、こっちもうれしくなりました。この用海の子どもたちから第2の佐藤選手が生まれてくれたら」と願った。佐藤輝を西宮市観光大使などに起用するか問われ「メイドイン西宮の『宮っ子』ですからね。もうちょっと育ってから、球団さんとこちらがうまくハーモニーできた時に」と慎重に検討していくとした。