元西武の中崎雄太氏(31)は、父との特訓で広島でプレーする弟の翔太(29)と兄弟でプロ入りの夢をかなえた。西武からドラフト1位指名された兄はプロ8年間で未勝利で退団。広島からドラフト6位指名された弟は守護神で16~18年のリーグ3連覇に貢献した。兄の思いとは-。

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雄太と翔太――。「中崎ブラザーズ」は、地元鹿児島の野球界では知られた兄弟だった。小学校、中学校、高校と全てのカテゴリーで、兄が進んだ道を弟も歩んだ。

「毎日、ずっと一緒に野球をやってましたね。父親が少年野球の監督になって、自分が小学2年生くらいの時からずっとですね」

野球から離れれば、ごく普通の兄弟。互いが中学生だったころまでは、取っ組み合いのけんかも日常茶飯事だったが、野球では2歳上の雄太が道しるべとなって、弟が追い掛けた。

「プロに入るまでは、ずっと背中を追っ掛けてくれた。プロに入ってからは、お互いにもう社会人なんで、自分のことを必死にやるって感じですね」

プロ2年目で1軍デビュー。着実にスタップアップし、広島の守護神に上り詰めた弟に対し、兄はプロの壁にぶち当たった。それでも、嫉妬することは一切なかった。

「僕は結果が出てなかったですけど、その分、弟が活躍してるからいいやって思っちゃったんです。今、思えば、そういう気持ちがあったから、ダメだったのかもしれませんね」

周囲から弟と比べられ、雑音も耳に入ったが、意に介さず、弟の活躍を心から喜んだ。

「父親とは兄弟でプロに行くために一生懸命やったんですけど、その夢がかなって良かったなと。プロに入ってからは別々の道という感じでしたから」

お互いに家族を持ち、ここ数年はテレビ越しに弟の登板を応援する。

「結婚もしたし、そんなに連絡を取ったりもしないですね。この2、3年は難しいシーズンになってますけど、またチームを支えるような活躍ができるように頑張ってほしいです」

弟への変わらぬ思いを持ちながら、自らはエイジェックの「NPB養成専門アカデミー」で講師を務め、選手たちの目標の達成に向け、ありのままの思いを伝える。

「やるのは自分。普段の練習にプラスアルファ、自分で取り組むか取り組まないかで差が出ます。結果もプロセスも、変えられるのは自分だけなんです」。

11月に行われたBCリーグのドラフト会議では、野手1人がBC栃木から指名された。来年も新たに選手が数名加わる。「ドライチ」で始まったプロ野球人生。夢の続きがまだある。

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