阪神中野拓夢内野手(25)が14日、西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、2900万円増の年俸3700万円でサインした。昇給率363%は12球団の新人野手で史上最高の大幅アップ。笑顔で「まずは時計を買いたい。100万、いくかいかないかくらいですかね」と声をはずませた。

球団では01年赤星憲広の昇給率233%を上回り、今季800万円からジャンプアップだ。だが、すぐに表情を引き締めた。「まだ1年間しか結果を残していない」。スキはない。この日も鳴尾浜で、1年間戦い抜いた体のケアを行った。

135試合に出場し、遊撃のレギュラーを勝ち取った。127安打で打率2割7分3厘。30盗塁は同僚近本を制して、リーグ盗塁王だ。「最初は走ったら全部アウトって勢いだった。なんとか乗り越えて、盗塁王を取ることができたので収穫」と話すが、満足せず、来季の野心を明かした。

「(盗塁)30は正直、少ないと自分のなかで思う。来季は本当に50盗塁するくらいの勢いで、目標を高く持ってやっていきたい」

リードオフマンとしての自覚がある。今年は73戦で2番先発だったが来季は切り込み隊長を狙う。「1番を打ってみたい。将来的には近本さんに1番をずっと任せるのではなく、自分が打つ気持ちを持ってやっていきたい」。理想は、次打者席から見てきた今季134戦1番の近本だ。「積極的に行くところはしっかり行く。追い込まれた後、簡単に三振しない」と話す。

9月24日巨人戦は絶体絶命の9回、前進守備でダイブ好捕。負けを阻む執念が光った。「50盗塁」到達のため「4割近い出塁率があれば」「打率は3割超さないと」と続ける。「2年連続盗塁王をとれるように。悔しさを忘れず、来年、日本一になりたい」。171センチの小柄な好選手は、いまや大きな戦力だ。守備も磨き、走攻守でV奪回の旗振り役になる。【酒井俊作】

▼阪神中野が363%アップの3700万円で契約更改。2年目野手のアップ率では、20年中川内野手(オリックス)の300%を上回る史上最高となった。投手を含めても阪神2年目では球団史上最高アップ率。また、伊藤将の3100万円アップは14年藤浪、20年近本の各3000万円を上回り2年目の球団史上最高昇給額になる。