26日からいよいよオープン戦が本格化。12球団のキャンプ取材を終えた日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(51)と和田一浩氏(49)が、ベテラン遊軍・小島信行記者を交え、気になった選手や気になった練習などを、それぞれの視点から振り返りました。

   ◇   ◇   ◇

小島記者(以下小) キャンプ取材、お疲れさまでした。強そうなチームはありましたか?

和田(以下和) 去年に続き、今年も新外国人選手がいなかったからなぁ。去年はセもパも最下位だったチームが優勝したように混戦。3割30発を打つような新外国人がいたら、優勝争いの本命になれますよ。

宮本(以下宮) 日本人として悔しい気持ちはあるけど、どのチームも外国人に頼らないと苦しい。それが来日すらできていない。ひとつ言えるのは、昨年活躍した外国人選手がそのままいるチームは有利。その点、DeNAやヤクルトとかはいいよな。

小 ルーキーやプロ入り2年目ぐらいの若手で目についた選手はいましたか?

和 ルーキーの野手では、ロッテの池田(来翔)が良さそう。体も厚いし、スイングも強い。練習試合ではセカンドを守ったりもしていたけど、そこには主力の中村(奨吾)がいる。どのポジションで使うかは分からないけど、ここまでは即戦力として起用できるレベルだと思います。高卒4年目を迎える山口(航輝)もよくなってましたね。

宮 ロッテの若手は体が大きくなっているんだよなぁ。ウエートトレとか食事の指導をしっかりやっているんだろうね。それに新人では池田だけでなく、高卒ルーキーのドラ1松川(虎生)もでかい。巨人との練習試合ではバットを折りながら、力でライト前に持っていってた。まだ突っ込んで打つから、引っ張って打球を上げるためにはポイントを相当、前にして打たないといけない。でも、あのパワーを生かせる打ち方を覚えたら、強打の捕手になれる。キャッチャーとしても雰囲気があった。

小 宮本さんはヤクルトの内山(壮真・捕手)と巨人の中山(礼都・遊撃)を褒めていましたが?

宮 この2人も出てきそうな雰囲気がある。でも経験が必要なポジションだし、同じポジションでヤクルトには中村、巨人には坂本がいる。この2人を高卒2年目の選手が抜くのは大変でしょう。内山にしてもキャッチングはもっとよくなってもらわないと困るし、中山も守備面の技術は上げていかないといけない。

和 打てるキャッチャーとショートはチームにとって貴重。両方とも守備面が重要視されますしね。

宮 ここ最近のキャンプを見て気になっていたんだけど、外野手とかを走者につけたケースノックをやらないよな?

和 確かにそうですねぇ。裏方さんとかが走者につく場合はあるけど、ほとんど走れない(笑い)。自分の現役時代はやらされたけど、面倒だし疲れるから、文句ばかり言ってたのを覚えています。でもやった方がいいですよね。

宮 外野手だって走塁練習になるし、体力強化につながる。絶対にやった方がいい。内野は走者がついての練習がとても大事。どれぐらいのスピードで、どの位置にいるのかを見て、どういうプレーをすればいいのかを判断するんだから。

小 そういえば、巨人のケースノックを見てダメ出ししてましたよね。

宮 そういうきつい言い方をしないでください(笑い)。ただでさえ日刊スポーツのせいで「宮本は厳しい」と定着してきてるんですから(笑い)。あれは走者がいなくても、いると想定して練習していなかったから、ちょっとつぶやくように漏らしただけ。よく聞いてましたね(笑い)。

小 聞いてたというより、巨人の中山がDeNA戦で併殺を狙ったプレーで一塁へ悪送球しましたよね。それで思い出したんです。

宮 今はコリジョンルールができて走者がぶつかって邪魔はできなくなった。でも送球の間に入って嫌がらせする走者はいる。普段から送球する方向と走者が重ならないように練習しないといけない。それができていなかったから、外野手を走者につけてやればいいと感じたんですよ。ただ、巨人だけでなく、僕がケースノックを見たチームはどこもやっていなかった。

小 当たり前ですが、試合を想定した練習が大事だってことですね。ところで和田さんは、鈴木誠也が抜けた広島打線について「みんなが長打力に磨きをかけるしかない」と指摘していました。鈴木の穴は埋まらないから「スモールベースボール」に徹した方がいいという意見もありますが?

和 去年だって、広島は鈴木がいたのに、ヒット数の割には得点が少なかったでしょ。それじゃ、余計に点が入らなくなる。得点力を上げるには、長打力を上げるのが1番。簡単には上がらないけど(苦笑い)

小 緻密な野球の申し子である宮本さんも同じ意見ですか?

宮 ほぼ同じ(笑い)。緻密な野球って簡単にいうけど、それを実践するにはある程度の技術が必要。例えば、無死二塁で逆方向に打って進塁打になればいいと思っているだけじゃダメ。ライト前ヒットにして無死一、三塁にしてやると思ってやらないと。技術のない選手はチーム打撃さえすれば許されると思いがちになる。それじゃ強いチームにはならない。

和 広島には引っ張って打球を上げる技術を持った選手が少ない。でも好打者はいる。だからもったいない。進塁打とかを重視しすぎて転がすようなバッティングばかり狙ったら、打撃技術は上がらないでしょ。

小 メジャーで長打力のある打者が重要視されるのも、それが得点力アップにつながるという統計が出ているからですよね。

宮 長打力のある選手が、ここ一番でチームバッティングをする。それが理想。でもまずは、打撃技術を上げることが先決ですよね。それに今の選手は怒られることに慣れていない。技術の低い選手に緻密な野球を教えようとしたら、怒ってばかりになっちゃう(笑い)。ただでさえ、サインを簡略化して選手の負担を減らし、伸び伸びやらせるようになっている。

和 「厳しい宮本」じゃなくなるのは寂しいですね(笑い)

小 そのかわり「マイペースの和田」はこのキャンプでも変わりませんでした。ステーキ屋で1人だけエビフライを頼もうとしていました(笑い)

和 みんながうるさいから、ステーキに変えたじゃないですか!

宮 でもレアがうまい肉なのに、1人でウェルダンにして食ってたよな。しかも食えなくなってみんなに分けてた。270グラムなんだから、1人で食えよ。

和 先輩、「厳しい宮本」が復活してますよ。

小 「緻密な観察力」も健在ですね。