日本ハム上沢直之投手(28)が、“七度目の正直”で今季初勝利を挙げた。7日、西武7回戦(ベルーナドーム)は4与四死球、2暴投と乱れながら7回4安打2失点にまとめ、10年目で最遅の先発7試合目での白星。前回登板後には北海道神宮へ参拝し、神にもすがる思いで勝利へのパワーを注入した。出遅れたエースが、自身の巻き返しとともにチームを上昇させる。

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苦悩の末に生まれた1勝は、上沢の涙腺を刺激した。「泣きそうです。マジで。ここ数年で一番うれしいです」。涙の代わりに、素直な思いをこぼした。エースとして勝てない苦しさから、精神面を保つのに必死だった。7回4安打2失点で、登板7試合目での初勝利。試合後のロッカールームは「キャリア初勝利くらい祝ってくれた」と価値ある1勝を物語っていた。

負のループを抜け出すため、向かったのは北海道神宮。前回登板後、心配する妻の誘いで、娘も連れてお花見を兼ねて参拝した。「今までは、なかった。そのくらい(精神的に)やられていました。そこに、すがってでも…みたいな」。妻には開幕前に勝負パンツを用意してもらうなど、大きな支えを受けて戦ってきた。「多分、待っていたと思う」と、待望の勝利球をプレゼントにする。

今季の目標の1つに「メンタルの波をつくらない」を設定。元々、感情の浮き沈みを表に出さないタイプだが、今年ばかりは違った。力になったのはファンの存在。SNSを通じて「絶対に、いつか報われる」、「信じて応援しています」など前向きな言葉に「マジで泣きそうになりました。早く喜ばせてあげたい。ファンの有り難さを実感した期間でした」と感謝した。

覚悟が違った。この日は3回に暴投で先制を許し、4回に被弾。流れが傾きかけたが、味方打線の奮起で6回に逆転に成功した。「みんなの気持ちを感じるところもあった」とギアを入れ直した。7回2死、古賀から空振り三振を奪い、ほえた。「本当に命懸けて抑えにいきました」と闘志をむき出しに、リードを守り切った。

試合後、新庄監督に両肩をもまれ「8回いけよ」と笑顔で声を掛けられた。「次はもっと長いイニング投げられるように頑張ります、と。もう1回、気持ちを引き締めてやっていきたい」。北海道神宮には、御礼と勝利の報告へ。心身で強さが増した上沢が、帰ってきた。【田中彩友美】

▽武田投手コーチ(7度目の先発で今季初勝利の上沢に)「本当に本人は試行錯誤していました。ほぼ真っすぐしか投げないブルペンの練習もあった。困ったら原点に返ってシンプルにストレートの大事さも必要なんじゃないかという話はしていました。エースの定めというか、勝っても負けてもやっぱりチームを背負わなければいけない。この1勝で波に乗っていけると思う。まず一番は心が落ち着いて、ゆっくり寝られるんじゃないですか」

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