プロになって立つ聖地のマウンドは、どうしてこんなに厳しいのか-。18年全国高校野球選手権で準優勝した日本ハム吉田輝星投手(21)が、甲子園でプロ初先発。金足農(秋田)で旋風を起こした4年前の再現が期待されたが、3回を投げ3ランを含む7安打4失点で撃沈した。検討していた「侍ポーズ」も今回は封印。今季初黒星を喫し、チームも今シーズン4度目の同一カード3連敗となった。

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3回ノックアウトで今季初黒星という現実に、吉田の声は沈んでいた。「高校の時は僕らがホームみたいな雰囲気があったけど、ビジターチームとして来てみると、阪神の応援がすごくて『これが甲子園か』って」。高校3年だった4年前の夏、頼もしく感じた大観衆の声援が、今回は心をザワつかせた。高校時代におなじみとなった、右腕を「シャキーン」と振り上げる「侍ポーズ」も封印。「さすがに、やめとくか~みたいな」と苦笑いした。

プロ入り後、初の甲子園での先発登板。今季、結果を残してきた中継ぎのイメージでマウンドに上がった。配球の組み立てに苦しんだ3回。2死一塁から中軸に連打を浴びて先制点を許すと、3日のカード初戦で3発放っている5番大山に内角の直球を捉えられた。左翼ポール際に突き刺さる3ラン。「めちゃくちゃ、いい打ち方をされた。詰まらせてファウルを取れる真っすぐを身に付けるとか、スライダーがあれば」。甲子園で救援登板した20年のオープン戦では、2回無失点も4与四球。プロになって立つ甲子園のマウンドは、毎回、宿題を与えてくれる。

今季2度目の打席は二ゴロに倒れた。5月25日ヤクルト戦(神宮)では、吉田が打ったファウルボールがネットを越えて、幼い女の子に当たってしまった。球団広報を通じて探しだし「ごめんね」と書き添えたサイン入りのユニホームをプレゼントした。そんな気遣いが、ファンの心をつかんで離さない。

この日の最速は147キロ。「直球の両サイドのコントロールは身に付けられている。磨きつつ、しっかり変化球で組み立てられるようにしたい」。今後の起用法は未定も、BIGBOSSは「ずっと抑えていた中継ぎの気持ちで1回1回、大事に(投げていた)。初回からいい三振を取って、ほえていましたから」。まだ21歳。リベンジの機会は、いくらでも、あるはずだ。【中島宙恵】

◆吉田と甲子園 金足農(秋田)のエースとして、18年夏の甲子園に出場。県大会初戦から甲子園準決勝までの10試合で完投勝利。決勝は先発したが、5回までに12失点で6回から右翼に。秋田大会5試合を636球で突破した鉄腕は、甲子園は6試合881球を投げて準優勝。中堅手に向かってシャキーンと刀を抜く「侍ポーズ」や「全力校歌」も話題となり、カナノウ旋風を巻き起こした。

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