楽天岸孝之投手(37)がプロ野球19人目となる12球団勝利を達成した。広島打線を7回6安打無失点に抑え、今季5勝目。西武時代の08年から11試合に投げ、0勝8敗と1度も勝てていなかった相手を封じた。打線は11安打4得点で援護。チームは2連勝で4カードぶりの勝ち越しを決めた。ソフトバンクも勝ったため、リーグ戦首位返り咲きはお預けとなったが、再浮上へ明るい兆しだ。

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最後はバッテリーの思いが合致した。岸は2-0の7回、2死走者無しから連打と四球で満塁を招いた。打席には広島中村奨。カウント1-1から内角チェンジアップを振らせ追い込んだ。4球目、炭谷のサインは同じ内角。ただし、真っすぐだった。「銀(炭谷)も勇気がいるサイン。期待に応えよう」。この日105球目。腕を振り切り、144キロに反応させなかった。見逃し三振。気合の入ったままの顔で、青いグラブをポンとたたいた。

前回2日の中日戦は4回7安打3失点で敗れた。内角への真っすぐが決まらなかったことが敗因にあった。最大のピンチで、この1週間、重点的に取り組んできた課題の成果を見せた。「ここぞというときに最高のボールがいった。(打者の)頭になかったのか、分からないけど、サインどおり」。岸の取り組みを間近で見てきた炭谷だからこそ、求めることができた1球でもあった。

炭谷とは西武時代から組んできたが、その当時からかなえられなかったのが、広島を倒すこと。過去11度、1度も勝てなかった。登板前日、広島打線の印象を問われても「どこのチームだから、ではないです」と答えた。本心は違った。「嫌なバッターは多いな」と思っていた。とにかく、無駄な四球を出さないこと。唯一与えた7回の四球は長野を攻めた結果。闘争心を貫いた。

過去18人しかいなかった12球団勝利を達成。記録の意味を問われたが「特に何もないですけどね」。12球団に勝った、ではない。同じ相手に負け続けることが許せなかった。「いつも以上に自分が勝ちたかった。そうすればチームも勝つんで」と言った後、ニヤッと笑って締めた。

「とりあえず『やっぱり勝てないか』と思われなくて良かったと思います」。

みんなの期待に応えた。【古川真弥】

▽楽天炭谷(7回2死満塁、中村奨を内角直球で見逃し三振)「狙い通りです。この1球が勝負と思っていましたし、岸さんも分かっていたと思います」

▽楽天石井GM兼監督(7回2死満塁の場面に)「あそこは岸に任せたいなというのがあったんで、代えるつもりはなかった。今日は真っすぐの質が良かった」

○…打線が岸を援護した。4回に武藤の犠飛と、西川の適時打で2点を先制。8回には、再び武藤が2点適時三塁打を放った。武藤は前日8日に1軍に再昇格したばかり。初のお立ち台に上がり「暗くて、あんまり見えないんですけど、僕の気持ちは舞い上がっているんで、めちゃくちゃ、うれしいです!」と喜びを爆発させた。

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