さあ阪神湯浅京己投手(22)が再昇格だ! 「8回の男」は23試合で16ホールド、防御率0.82の安定感のまま6日に1軍を離れ、2軍でリフレッシュ調整。充電を終え、リーグ戦再開の17日DeNA戦(甲子園)で1軍復帰する見込みだ。守護神の岩崎優投手(30)が13日に登録を外れ、同様にリフレッシュ調整に入ったため、湯浅は代役で「9回の男」が有力。チームの鍵を握る4年目右腕のブレークの秘密を「猛虎リポート」でお届けする。

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湯浅は2軍合流初日の7日はノースロー、8日からキャッチボールを再開した。ブルペン投球もこなし、1軍復帰へ心身ともに万全な状態といえる。

この期間、選手寮「虎風荘」の横にある鳴尾浜球場では、積極的に取材に応じた。昨季までプロ通算わずか3試合の男の覚醒理由は-。湯浅の心技体を分析した。

【心】

今季、唯一失点したのが4月12日の中日戦(バンテリンドーム)。ビシエド、阿部、石川昂にフォークを痛打され2失点。逆転負けしている。後日、百戦錬磨の先輩に言われた言葉が心に残っている。

「岩崎さんに『真っすぐを打たれたわけじゃない。全てを出し尽くしての点の取られ方じゃないから、まだまだやれる』と」

映像で見返し納得した。「真っすぐあっての変化球なんだと。あの試合があったから、次の試合では真っすぐで押せました」。シーズンを戦い抜くため、大切な考えの1つをあらためて痛感させられた。今季7試合目の登板。早い段階で失敗を糧にできた。

【技】

ブレークを支える武器の1つがそのフォークだ。150キロ超の直球とともに代名詞にもなりつつあるが、意外にも「今までは直球とスライダーが軸だった」と明かす。昨年から本格的に投げ始め、当時の高橋建2軍育成コーチ(現広島1軍投手コーチ)から縫い目に指をかける握りを教わった。これがハマった。

「握りは建さんに教えてもらいました。去年は『落とそう』としすぎていたけど、今年はバッターが空振りする軌道をイメージをするようになりました。力みがなくなって、思ったように投げられています」

今季の「ベストフォーク」に挙げたのは4月6日のDeNA戦。1-1の延長11回無死三塁。フルカウントから137キロフォークで桑原を空振り三振に仕留めた場面だ。「これで自分的にはノッていけました。犠飛も安打も嫌な場面。逆に、四球なら点が入らないと思えた。無死満塁になるまで、時間をかけてでもゼロに抑えれば勝ちだと」。勝負どころで投げ切れる技術が備わりつつある。

【体】

時は2年前にさかのぼる。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた20年の開幕前。選手寮では食事が弁当形式になった。練習も各自、1人で行った。すると、みるみる体重が落ちていった。「謎にガクンと減った。独立リーグ時代、無理にご飯を食べて8キロ増やしていたから、体が軽くなった感覚でした」。

コロナ禍の巡り合わせで手に入れたベストボディー。「体重を増やすのはオフでいい」と今はキープに努める。毎週のオフには酸素カプセルに1時間半入り、疲労回復にあてる。ケアは怠らない。何より、3度も腰椎分離症を経験したからこそ、今、1軍で投げる喜びにあふれている。

「1軍に戻った時、今まで以上にチームの力になれるように調整しています。目の前の試合を勝てるように、自分の力を出せるようにやっていきたい」

先輩から学び、コーチに教わり、そして自身で作り上げてきた心技体で、フル回転する覚悟はできている。【中野椋】

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