大阪電通大(2部)が甲南大(1部)を下し、創部初の1部昇格へ逆王手をかけた。先発江本裕輝投手(3年=枚方津田)が9回3安打で完封。昨年11月まで同野球部で投手コーチを務めた阪神江草仁貴2軍投手コーチ(41)の愛弟子が、154球の熱投で1部校から1勝をもぎ取った。中盤に奪った2点を守り切り、これで1勝1敗の五分。運命の第3戦は17日、南港中央で午前10時プレーボールだ。

 ◇   ◇   ◇

身長169センチの江本が、ほえた。9回2死。甲南大の最後の打者を中飛に仕留めると、力強く左拳を握った。ベンチ前で迎えてくれた仲間のもとに飛び込み、「うおお!」と声にならない声で喜びを表現した。

江本 監督さんに「明日完封しろ」と言われていた。なんとしてでも、最後まで投げたいと思っていた。今日負けたら終わり。やるしかないと。捨て身の覚悟で挑めました。

154球の大熱投。途中、足がつりかけた場面は1度や2度ではない。「飛ばして、アドレナリン出ながら、体力持ってくれました」。決して大きくない体を目いっぱい使い、わずか3安打でスコアボードに「0」を並べた。

「江草直伝」の宝刀がさえた。20年に入学して間もなく、当時の江草投手コーチからカットボールを教わった。握り、リリースの感覚から全て学んだ。木製バットの芯を外せるように、打者の手元で小さく変化させることを追求。2人で、ブルペンで何度も練習した日々が原点だ。

江本 カットボールを覚えた瞬間、一番の武器になった。江草コーチのおかげで操れるようになったんです。

大阪・枚方津田では2年からエース。3年夏は3回戦で東海大仰星にコールド負けを食らった。不完全燃焼に終わり「大学でもやりたくなった」。当初は他大学に進学予定だったが、「江草コーチがいるのを見て、電通大に決めました」と進路を変更した。同じサウスポーの元プロ指導者から、たくさんのことを学んできた。

江本 1年の秋からベンチに入れてもらったし、本当にかわいがっていただいた。江草コーチもずっと1部を目指してやってきた。喜んでもらえるように、いい報告ができるようにしたい。

就任1年目の清田和正監督(52)は「投手陣は江草コーチのおかげで伸びてきた。ほんとに感謝です。試合中でもフィールディング成功したりしたら江草コーチに感謝!ってベンチから聞こえる」と目を細める。「明日は、守りにしても打つにしても積極的に挑むだけ。挑戦者らしく戦いたい」。1部リーグのみだった1963年に加盟した大阪電通大は、70年に2部リーグができて以降、1度も昇格できていない。この2戦を通じ、1部校にも引けを取らない力があることは証明済み。江草コーチに1部昇格の朗報を届けるため、一丸となって歴史を変える。【中野椋】