レギュラーシーズンが17日、再開する。ロッテ高部瑛斗外野手(24)はここまで全63試合に出場している。国士舘大時代は東都大学リーグ2部の歴代最多安打記録を樹立。プロ1年目はイースタン・リーグで打率2位、昨季は同リーグで盗塁王に輝き、今季はここまで1軍でパ最多の21盗塁と、カテゴリーが上がってもアピールを続ける。オンラインインタビューで現況を尋ねた。【金子真仁】

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高部は今季63試合のうち、57試合で1番スタメンで起用された。

「なるべく初球を振っていきたいという気持ちはあります」

味方に相手の球を見させる-。1番打者に対してそんな考え方もある中で、高部の仕事は「切り込み隊長」そのもの。結果も伴う。広島との交流戦が象徴的。初戦は左腕床田、2戦目は右腕遠藤。普段は対戦しない投手たちに、1打席目から安打を放った。

「分からない投手だからこそ初球から行こうというふうには思っていたので。それでうまくヒットになってくれたなと思います」

相手からの研究も増す中で、1軍の一線級に日々食らいついている。実現は難しいにしても、例えば味方の佐々木朗と対戦することになったら?

「絶対、まっすぐ振りに行きますね。初球から。本当に、やりたくないですけど(苦笑い)」

プロ2年目の去年は5度の2軍落ちを経験した。声が掛かってチャンスが巡るたび、三振、特に見逃し三振が目立った。「出塁率を求めたり簡単にアウトになりたくないと思ったりで、慎重になりすぎた部分が」。度重なる2軍通告にも心折れずに、意を決して己を変えた。攻めの姿勢に集中し、己の役割を客観視。筋力トレーニングも増やした。オープン戦からの好調ぶりをつなげ、いよいよ“1軍半”の殻を破った域に到達している。

今なお右手に残る、忘れられない衝撃がある。プロ1年目、石垣島での春季キャンプ。台湾楽天との練習試合は、プロ人生の始まりの一戦だった。2番打者でスタメン起用され、初回にいきなり安打、盗塁、ホームインの3点セット。勢いのままに2回の第2打席も内角球をしっかりと左中間に飛ばしたら「折れたなと思いましたね」。

振り抜いて、バットを離した瞬間に「ポキって」。折れたのはバットではなく手。右手有鉤(ゆうこう)骨の骨折だった。「痛みはなかったんですよ、最初は。でも三塁まで走りながら手が動かなくて、けいれんしてて」。全治1カ月の診断。満塁の走者を一掃させた適時三塁打で、戦線離脱を余儀なくされた。悔しかったが、今はこう思う。

「どうにかアピールしたかった中でああいう結果になって…。でも今、やってよかったなと感じましたね。(1軍の状態が)いい時に有鉤骨を骨折したらその分、悔しかったでしょうし。最初の方に、何もない状態でケガしといてよかったなと思います」

バットスイングで骨が折れる-。振ることへの怖さのようなものを口にした時期もあった。当初は握力も簡単には戻らなかった。振り込んで振り込んで、逆に思い切りにつながった。

「骨、もうなくなったんで、逆に思い切り打てるわと。(除去手術で)取ったので。もう折れる場所がないんで」

攻めるのみ。初球から臆せず振るリードオフマンのシルエットが、プロ野球ファンに新鮮に映ったのか、オールスターのファン投票でも中間発表が5万票を超えてきた(16日時点)。「見ていただいているファンの方に評価していただいて、票を入れていただけるのはとてもうれしいですし、これだけの方に応援してもらえているんだな、とすごいモチベーションになります」と感謝する。

ここまでの働きぶりは、チーム内の野手ではトップ級といえる。「僕のプレースタイルは走攻守全てそろってナンボのタイプだと思うので。その全てで何とか高い水準を保ちながら1年間戦い抜いて、その中でも何か突出したものが出てくれば、追い求めていけたらいいんじゃないかと」。さらなる包囲網を突破しなければならない。高部には、まだまだ上がある。

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