今季4人目の大記録はヨシノブだ! オリックスのエース山本由伸投手(23)が、西武11回戦(ベルーナドーム)でプロ野球史上86人目、通算97度目のノーヒットノーランを達成した。許した走者は5回2死から四球の外崎だけで、9三振を奪った。102球、2時間45分の「ヨシノブ劇場」でチームの連敗を6で止めた。プロ野球で同一シーズンに4人の「ノーノー」は79年ぶりのこと。リーグ単独トップの7勝目を挙げ、防御率もロッテ佐々木朗を抜いてトップに立った。

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ウオーターシャワーが高ぶった心と体に心地よかった。山本は捕手の若月と抱き合い、ベンチを飛び出した仲間たちから笑顔でペットボトルの水を浴びた。

「気持ちよかったです! いつも(サヨナラ勝ちで)かける側。冷たいだろうな~と思っていた」

プロ6年目で初の無安打無得点。試合前は本調子ではなく、ブルペンで制球を欠いた。「今日はすごく打たれる気がしていた。9回まで集中して、ドキドキしながら投げたので喜びがすごく大きい」。冷静なマスクの下でひた隠しにした重圧。27個目のアウトを奪って解放された。

唯一の出塁は5回2死からの外崎。「前回対戦でボール先行になったのを覚えていた」が、4球連続ボールで四球。「すごく悔しかった」。9回1死では右手負傷中の森が代打で登場。「今日出てくるとは思ってなかった。ビクッとしました」というが、この日最速の155キロで見逃し三振に仕留めた。

偉業達成のバックボーンには甘くない日々がある。

「食べてないなぁ~、アイスクリーム!」

最後に口にしたのは正月。「試合に勝ったご褒美で食べたりしない。日程に余裕がないと、手は出しませんよ」。感情だけでは動かない。「僕には大きな目標がある。1日をおろそかにしたら、その1日は、もう戻ってこない。サボった結果は自分に返ってくる」。

1月末の契約更改交渉では「将来の話を、真剣に」と、球団幹部に初めてメジャー挑戦を直訴した。言葉にしたからにはシャーベットの爽やかさも、チョコの甘い誘惑も我慢した。

「ベストな状態でマウンドに。怠けたり気を抜いてケガしたら、もう一生マウンドに立てないかもしれない。たくさん不安がある。だから、やらないと!」

起床、食事、球場入りの時間…。全ての調整に狂いはない。かつて、悩みの多さに頭を抱えた23歳は「不安だなと思えているのは、それだけ真剣に取り組めている証拠」と超ポジティブ思考を身に付けた。

花束を掲げると、無数のフラッシュライトを浴びた。気分転換で入れた左前髪の金色メッシュがキラリ輝く。「今日投げていた気持ちを忘れずにいれば…。もしかしたら、できるかなと」。完全試合-。アンコールの拍手は鳴りやまない。【真柴健】

▼山本が6月7日今永(DeNA)以来、プロ野球86人、97度目のノーヒットノーランを達成した。オリックスでは12年10月8日西以来で、阪急時代から9人、10度目。球団別の回数は巨人16度(12人)中日12度(12人)に次いで3番目に多い。山本が許した走者は5回、四球の外崎だけ。許した走者1人だけのノーヒットノーランは前記今永以来18人、19度目になる。これで今季のノーヒットノーランは4月10日佐々木朗(ロッテ=完全試合)5月11日東浜(ソフトバンク)今永に次いで4人目。1シーズンに4人以上達成したのは1リーグ時代の40年5人、43年4人に次ぎ3度目で、2リーグ制後は初めて。パ・リーグで3人が達成したのも初めてだ。