ちょっと驚いた。スピードあふれる躍動感、剛球に負けない「マン振り」。6月7日、全日本大学野球選手権で天理大・友杉篤輝内野手(4年=立正大淞南)を見た印象だ。ドラフト候補の「品評会」と化す同大会。昨年初めて見てうならされた西日本工大・隅田知一郎投手(現西武)と同じ「ピカイチ」の印象を持った。

3回、147キロ速球を右前へ。同じドラフト候補の強肩捕手、名城大・野口泰司(4年=栄徳)の矢のような送球をかいくぐり、二盗を決めた。50メートル6秒0の快足を披露した。6回、二遊間にゴロが飛ぶと、軽やかなフットワークでさばいた。初戦敗退したが、全国大会でも頭1つ抜けた動きは、隠しようがない。

プロで通用するか。この一点で周囲は逸材を見極める。スカウトの本音を集めてみた。

「守れるショート。球団によって取りに行くだろうね」「守備力と走力は評価できる。でも、打力はどうか。まだ力が足りない」「あのタイプはあまりいない。右投げ右打ちのショート。それだけでも希少」。「いまの時点ではスーパーサブじゃないか」

僕は技術的な評価はできないが、プロ野球の現場で18年見てきた光景と重ね合わせて判断している。友杉の力に太鼓判を押す。これはもう、直感でしかない。まずは6回の遊撃守備だ。華麗な足のさばきは教えてできるモノではない。スピード十分のプレーは、天性の一芸といえる。そして何よりは打席での姿勢だ。中飛に倒れた6回、2球目の146キロ速球をフルスイングした。ファウルになったが、172センチと小柄ながら、あれだけバットを振れるなら、前途有望だろう。

阪神大学野球の春季リーグでは打率4割4分7厘で首位打者。10盗塁で盗塁王にも輝いた実力を全国で見せつけた。「悔しい気持ちしかない」と振り返った試合後「走攻守全部にバランス良くを普段から意識しています。そこが持ち味」と胸を張った。野口から決めた二盗も光った。「いいスタートを切ればセーフになる自信がある」とも言う。ソフトバンク今宮を手本に遊撃の守備範囲の広さやスローイングの強さを学ぶ。

試合後の会見で、プロ向きだと感じたシーンを紹介しよう。ピンクのリストバンドを用いていた点を聞かれ、苦笑いで答えた。「ピンクが好きというわけじゃない。体が大きくない。目立つようにやっています」。躍動するプレーでも十分目立ったのだが、売り出そうとする色気もいい。

関西の大学5リーグの野手で唯一、侍ジャパン大学日本代表に選ばれた。7月2、3日の社会人とのオープン戦は遊撃でプレーし、5打数無安打、1盗塁だった。8日開幕の「ハーレム・ベースボールウイーク」(オランダ)にも出場する。チャレンジの日々は続く。