関西の老舗球団だった近鉄バファローズで、球団代表などを務めた足高圭亮(あしたか・けいすけ)さんが、天命をまっとうした。21日に肝臓がんで69年間の人生に幕を下ろした。23日に大阪市内で家族、近親者のみで葬儀・告別式が営まれた。

喪主で、長男の雄哉(ゆうや)さんから「父は日刊スポーツが大好きだったんですよ」と告げられた。初めて聞いた故人の優しさが身に染みて、こみ上げていたものがあふれる。

「(病床の)ベッドにいても、『おいっ、ニッカン持ってきてくれ』って言われてたんです。口数は多くない父でしたが、いつも家族を見守ってくれていました」

足高さんは、04年(平16)近鉄とオリックスの球団合併に端を発したプロ野球史に残る「球界再編」の生き証人だった。近鉄は球団名の命名権売却で改革に乗り出す姿勢を示したが、最終的に球団消滅につながった。

近鉄は01年に梨田昌孝監督のもと、パ・リーグ制覇を果たした。足高さんは球団取締役代表としてチームを支えた功労者だった。その3年後に球団を手放すとは思ってもいなかっただろう。

ライブドアの堀江貴文社長が近鉄買収を表明、1リーグ制浮上、史上初のストライキ、ダイエー・ロッテ・西武が絡む合併構想、楽天、ソフトバンクの誕生など激動の連続。近鉄はオリックスとの商談に突き進んだ。

コロナ禍の前は、本当によくご一緒した。「近鉄グループが厳しい時期だったのは確かだが、本拠地も変えず、そのまま近鉄が経営するという話だった。まさかオリックスと合併するとは…」。親会社はリリースの方針を固めても、本人は受け入れがたかった。

雄哉さんは「会社の方向性と違って、球団を残したかったようでした。それも父らしかった。でもその頃が一番充実していたように思います」と気丈に話され、猛牛軍団を愛した男の意地に触れた気がした。

並べられた思い出の写真に、カラオケのマイクを握る1枚が…。豪快で細心だった姿が思い浮かんだ。いつも歌っていたのは、アリスの「遠くで汽笛を聞きながら」。でも、もうあの歌は聴けないのですね。天国に旅立った名物フロントマンを偲んで手を合わせる。【編集委員=寺尾博和】