楽天辰己涼介外野手(25)は、自ら打った決勝打を目で追いながら、こんなことを考えていた。「(母校の)社高校おめでとうって思っていました」。

3点を追う7回、2死から同点に追い付きなおも一、三塁。勝ち越しの絶好機、カウント2-2から直球を中前へ運ぶ勝ち越し打を放った。火が付いた打線の勢いに押されながら、試合を決めた一打だったが、母校の活躍に心が震えていた。

後半戦再開前日の7月28日、母校は兵庫大会決勝で延長14回の激闘を制し、夏の甲子園出場を決めた。創部74年目にして初めてで、その戦いを生中継で見届けた。「見たら高校野球って、こんなに人に感動与えるもんなんやなと思って、珍しく感動してました」。躍動する後輩の姿に、本番での差し入れは「何でもしてあげたい」。お立ち台でも「私事ではないのですが、母校の社高校が夏の大会に初出場します。応援してあげてください」。後輩たちへの思いが、次から次へ絶え間なくあふれた。

チームはこれで3カードぶりに勝ち越し。順位は変わらず4位のままだが、首位西武とは1・5ゲーム差とひしめき合っている。前日に石井GM兼監督が新型コロナ陽性となり不在の事態。真喜志ヘッドコーチが代行で指揮を執る。辰己は「1年目からよく怒られた。やる気ないプレーによくご指摘いただいて、気を張ってやれているのは真喜志さんがいるから。そういう存在です」と2連勝で恩返しした。無表情の顔とは裏腹に、ハートは熱く燃えたぎっていた。【栗田成芳】

○…真喜志ヘッドコーチが、監督代行として2連勝を飾った。石井GM兼監督が新型コロナ陽性者となり、前夜から指揮を執った。2戦合計23安打17得点と打線爆発で2連勝。真喜志ヘッドは「打線がつながってきた。諦めずに選手がやってくれたので、何にもすることがなかった」と選手に感謝した。

○…4番島内が2日連続でヒーローになった。3点を追う6回、1点を返しなおも一、二塁のチャンスで、右翼線へ2点適時三塁打を運び同点。その後の辰己の決勝打に結び付けた。前夜に続きお立ち台に上がり「結構負けてる時期もあったので、ここから自分が出る出ない関係なく、勝てるようにしたい」と言い切った。

▽楽天岡島(7回先頭の打席で1号ソロを放ち、その回6得点の呼び水となり)「チームとして落ちている雰囲気はなかったですし、みんなで『ワンチャンス』という攻撃ができていたので、変な後ろめたさはなかったですね」

▽楽天藤平(5回3安打3失点で4年ぶり白星逃す)「もう1つステップアップするために、ランナーがいる場面で厳しくいく事が必要になってくる」

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