踏ん張った。阪神が11日の中日戦(甲子園)に快勝。連敗を2でストップし、クライマックスシリーズ圏内の3位を死守した。1点リードの6回2死満塁で勝利をグッとたぐり寄せる2点タイムリー二塁打を放ったのは佐藤輝明内野手(23)。試合前には今季限りでの引退を表明した中日福留孝介外野手(45)とあいさつを交わした。タテジマの背番号「8」を受け継ぐ若虎が甲子園で躍動した。

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佐藤輝は二塁ベース上で何度も、何度も手をたたき喜んだ。1-0。まだまだどちらに転ぶかわからない試合展開の中、6回2死満塁で回った打席だった。フルカウントからの7球目。見逃さなかった。中日勝野の140キロフォークを捉え、痛烈なライナーを右翼線に飛ばした。

「みんながつないでくれたチャンスでどんな形でも走者をかえしたい思いでした。すごく競った展開だったので、打って流れを持ってきたかった。うれしかったです」

偉大な先輩から阪神の背番号「8」を受け継いだ。この日は今季限りで引退を発表した中日福留が甲子園に姿を現した。佐藤輝は1年目のキャンプで、練習後に一瞬あいさつを交わしただけで、この日ほぼ初めての会話だった。佐藤輝が「お疲れさまでした」と頭を下げると、レジェンドは肩に手を触れながらこう言った。「練習たくさんしろよ」。

福留は日米通算2450安打を誇りながら、足を生かして二塁打も量産してきた男。若き主砲も新人から2年連続の2桁本塁打に到達。さらに、今季は三塁打8本でリーグ2位、二塁打33本はリーグトップを走っている。「あれだけ長く現役を続けるには、何かが違わないといけない。練習して、福留さんのような偉大なスターになりたいなと思います」。たった数秒間の会話を胸に刻んだ1日だった。

矢野監督も「あそこのタイムリーはチームにとっても大きかった。輝もまだ本来の状態ではない中、きっかけにしてもらいたい」と見守った。12日にも完全にリーグ優勝が消滅する可能性はあるが、この日の連敗ストップでクライマックスシリーズ圏内を争う4位広島、5位巨人との差を1.5ゲーム差に広げた。まだまだ熱い戦いは終わらない。【三宅ひとみ】

▼佐藤輝がリーグトップを走る33本目の二塁打。直近で球団のリーグ最多二塁打は13年マートン。ちなみに、福留も02、05、06年の3度最多二塁打を獲得しており、06年の47二塁打は中日の球団記録。また、日米通算では歴代3位の520二塁打。NPB通算は409二塁打で11位タイ。

▼阪神は12日にも今季優勝の可能性が消滅する。条件は、ヤクルト○阪神●の場合のみ。優勝を逃せば17年連続。

▼今季中日戦はここまで12勝12敗。12日の今季最終戦に勝てば3年連続の勝ち越し、負ければ3年ぶりの負け越し、引き分ければ05年以来17年ぶりの相星のいずれかが決定する。

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