虎党の「あと1人」コールがマスク越しに聞こえてきても、DeNA佐野は「諦めている人は誰もいない」と前だけ向いた。1点を追う9回2死一、二塁。カウント2-1から、阪神岩崎のスライダーを右前に運んだ。佐藤輝は前進しておらず、二塁から大田が悠々と同点ホーム。一塁でカッと口を開けて喜んだ佐野は「先頭で宮崎さんが出て、つながって。そこに、みんな乗っかっていった」。さらに楠本が「佐野さんが同点にしてくれていた。打ったら、もうけもん」とノリノリで決勝打を放った。

先にヤクルトが負けていた。ゲーム差を詰めるチャンス。1点リードの6回以降はリリーフ陣がつなぐ必勝パターンのはずが、8回にエスコバーが3失点でひっくり返された。だが、諦めない。9回、先頭の宮崎、代打・大田と連打し、桑原、佐野が適時打。牧は四球を選び、楠本で再逆転劇は完成。三浦監督の言葉が全てを示す。初回には先制ソロも放った佐野の活躍を問う声に「佐野だけじゃなくて、みんなです」と力説した。これで首位と6ゲーム差。まだまだ遠いが、23日からは直接対決3連戦が控える。「諦める」なんて選択肢が、あるはずない。

「みんな」とは選手だけじゃない。試合前のフリー打撃。先頭でマウンドに立った福本査定担当補佐兼打撃投手は、相手の先発青柳を想定しサイドから投げた。上を横に変えても、屈指の制球は相変わらず。佐野は「与えられた環境で最高の準備をしていきたい」と言った。その思い、ベイスターズに関わるみんなで体現する。【古川真弥】

▽DeNA上茶谷(5回3安打1失点)「勝ち越されなかったことは良かったですが、初回の1点がすごく重く感じ、前回と同様なことをしてしまい申し訳ないです」

▽DeNA牧(6回に一時勝ち越し打)「前の打席のチャンス(3回2死満塁)で凡退していたので強い気持ちで臨みました」

▽DeNA伊勢(球団新記録の39ホールドポイント)「これだけ積み重ねられるとは思わなかった数字。歴代でも一番になれたことをうれしく思います」

【ニッカン式スコア】20日の阪神-DeNA戦詳細スコア