オリックスが大逆転で、95~96年以来のリーグ連覇を飾った。

ソフトバンクが優勝マジック「1」で迎えたロッテ戦に敗れ、2位オリックスが楽天に勝利した。最終成績が76勝65敗2分けと両球団が勝率で並んだが、直接対決で勝ち越しているオリックスが2連覇を決めた。

マジック1のソフトバンクを追走して乗り込んだ仙台。勝つしかないオリックスのシーズン最終戦は序盤3回まで、楽天田中将に完璧に抑え込まれた。先頭の福田がチーム初安打を放った4回は2死一、三塁と好機をつくるも、西野が一直に倒れて逸機。その裏、無死満塁から2番手の比嘉が楽天ギッテンスに左前打を浴び、2点を先行された。

ZOZOマリンで最終戦を戦うソフトバンクは、2点をリード。昨年王者は追い込まれていた。

だが5回、先頭・頓宮の中前打からオリックス打線が田中将をとらえ始める。紅林が左前打で続き、代打の山足が四球を選んだ無死満塁。ここで伏見がストレートを右前に運んで、1点を返す。「なんとか気持ちで打ちました!」という伏見に、福田が続いた。三塁線を破る逆転の2点適時打を放った。

「前のバッターたちがチャンスでつないできてくれていましたし、なんとか食らいついていってランナーをかえしたいと思っていたので、いい結果になってくれてよかったです」。福田はガッツポーズを繰り返す。9月30日の本拠地・京セラドーム大阪最終のロッテ戦。負ければシーズンが終わる試合で、福田が意表をつくセーフティバントをきめ、サヨナラ勝ちをもぎ取った。その勝負強さをこの日も発揮した。

3-2と勝ち越したあとは、宇田川、山崎颯ら150キロ超の快速球を誇る救援陣が楽天の反撃を抑え込む。

ロッテと対戦したソフトバンクは6回に逆転を許し、反撃及ばず敗戦。勝率が並んだものの、対戦成績で上回り連覇が決まった。

楽天に最大11.5ゲーム差をつけられ、連覇の希望が消えかけたときがあった。主力が新型コロナウイルス感染で戦列から離脱し、チーム編成にも苦しんだ。昨季のリーグ優勝を支えた杉本やT-岡田らが故障や不振に苦しみ、ソフトバンクの後塵(こうじん)を拝した。それでもあきらめることなく、逆転優勝を信じて全員で前進を続けた。その結果の連覇。昨年はエース山本が完封勝利でシーズン最終戦を締めた仙台の地で、オリックスが大逆転のゴールにたどり着いた。

 

○…右肋骨(ろっこつ)骨折で離脱中の安達がCSでの復活を目指す。9月10日のソフトバンク戦で一塁カバーに入った際に打者走者と交錯。右脇腹に違和感を訴え、その後骨折と診断された。9月30日のソフトバンク戦で能見の引退試合を見届けた後、「CSに間に合うように準備しています」と明かしていた。昨年実現できなかった「日本一」に向け、懸命にリハビリを続けていく。

○…2年目右腕の阿部翔太投手が胴上げ投手になった。3点リードの9回を3人斬り。代名詞になっている渾身(こんしん)のガッツポーズを決めた。守護神平野佳ではなく、最終回に指名されて驚いたという。「緊張して心臓が飛び出るかと思った。最後を任せてもらえて中嶋監督に感謝です。去年は全然貢献できなかったので、ごほうびというか」。新人王候補にも挙がる怪腕が存在感を示した。

○…先発ローテに返り咲いた山岡が、優勝を支える中心戦力になった。昨季はシーズン中の右肘手術で長期離脱し、日本シリーズ第5戦の救援で勝ち投手に。今季は4月1日の日本ハム戦でチームの連敗を5で止める復活勝利を挙げ「2年分の借りを返したい。ホームでいっぱい勝っていけたら」と明かした。山本、宮城らと投手陣を引っ張った。終盤は新型コロナウイルス感染などで調子を落としたが、復活の6勝が優勝につながった。

○…守護神の平野佳が胴上げ投手は阿部に譲ったが、連覇に貢献した。28セーブを挙げた38歳のベテランクローザーはブルペンの精神的支柱。躍動する若手投手もサポートしながら「任されたところでしっかり投げるように」と頼もしい兄貴分的役割を果たした。中嶋監督からも「いるだけでみんなの薬。安心の材料」とたたえられる右腕が、ポストシーズンも奮闘する。

○…昨季ベストナイン、ゴールデングラブ賞でブレイクした宗が、今季も安定した成績でチームを支えた。9月19日のソフトバンクとの首位攻防戦では、延長10回2死満塁で二遊間を切り裂くサヨナラ打で涙した。「年齢を重ねてから泣きやすくなってて(笑い)。絶対に全員で優勝したいと思います!」。紅林と並びチーム最多の130試合に出場。劇的な逆転優勝に感極まった。

○…山崎福が先発&中継ぎの5勝で連覇を支えた。中学3年時に脳腫瘍を乗り越えた左腕は、今季から1イニングにつき1万円を同じ病に苦しむ患者、家族のために寄付。「1イニング、1アウトでも多く」と念じ、昨季のキャリアハイの116回1/3に迫る114回2/3を投げ抜いた。野手顔負けの打撃センスも健在。7回1失点で今季2勝目を挙げた翌日の6月3日広島戦では野手としてベンチ入りし、3点リードの6回2死で代打起用された。結果は二飛だったが、プロ8年目のシーズンも投打の才能をフル活用させた。

○…能見兼任コーチが移籍から2年連続Vを果たした。連覇を呼び込んだ“優勝請負人”は、今季限りで現役を引退する。引退セレモニーが行われた9月30日のロッテ戦(京セラドーム大阪)では同点の8回に登板。安田から4球で空振り三振を奪い、現役生活に幕を下ろした。ポストシーズンはコーチ業に重きを置き、若手投手陣を積極的にサポートする。

○…ヘッドコーチの水本監督代行が挙げた3勝も連覇を支えた。中嶋監督が新型コロナウイルス陽性判定を受け、8月26日の西武戦から9月1日楽天戦まで6試合を指揮し、3勝3敗の5割で役割を果たした。采配2戦目の8月27日の西武戦では、宮城がプロ初完封。左腕は代行1勝の記念球を水本ヘッドに手渡そうとしたが「自分で持って、大事にしてほしい」と受け取らず。選手を思いやる心遣いで、監督不在の非常事態を乗り切った。

○…昨季本塁打王のラオウこと杉本が、シーズン最終戦で再昇格し、価値ある一打を放った。途中出場から9回1死一塁で左翼線二塁打。伏見の2点適時打につなげた。春先に極度の打撃不振に陥り、一時は打率が背番号と同じ0割9分9厘まで下がったが、懸命に立て直した。「もうやるしかない。1打席に集中していきたい」。鬱憤(うっぷん)を晴らすべく、ポストシーズンでの“昇天ポーズ”連発を約束した。

○…高卒3年目の紅林は、早出練習に付き合ってくれた中嶋監督に感謝した。「監督が、もっと打てよ、バカタレ! とか、愛情のある言葉をくださって、シーズンを頑張ることができました」。指揮官からティー打撃のトスをあげてもらうなど、濃密な時間を過ごしてきただけに、格別の優勝となった。

○…中川圭は「超ユーティリティープレーヤー」で貢献した。内外野を守れ、クリーンアップを任されても結果を残す。日々スタメンオーダーの変わる「中嶋野球」の申し子は、指揮官から「無敵」と表現される。4年目で初の規定打席もクリア。「試合に出させてもらっている立場。監督に恩返しできるように、1球1球、死に物狂いでプレーしていけたら」と日本一を見据えた。

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