ヤクルト高津臣吾監督(53)がメリハリを利かせたタクトで、29年ぶりの歴史を刻んだ。勝つか引き分けでCSファイナルステージ突破が決まる一戦で、キャプテンで右打ちの山田哲人内野手(30)を外し、3番二塁に左打ちの宮本丈内野手(27)を起用。その宮本が1安打2四球で、7回の逆転へとつながった。さらに直後の8回には清水昇投手(26)をつぎ込んだ。シーズン中は1度もなかった3連投を解除。盤石の継投で逃げ切り、92、93年以来の2年連続日本シリーズ出場をつかんだ。

   ◇   ◇   ◇

最後の1人となっても、高津監督はベンチで腕を組み表情を崩さなかった。9回2死。マクガフが阪神原口を空振り三振。その瞬間、緊張をほどき、コーチたちとハイタッチで喜んだ。

「毎回、高くなっていく。外国人選手が中心となって高く上げてくれるので、怖いですね。でも、すごくうれしいです」

今年2度目の胴上げ。リーグ優勝時より2回少ない5回だったが、雨上がりの神宮の夜空に舞うと、心からの笑みがはじけた。

「セ・リーグのチャンピオンとなって、ここで負けるわけにはいかない」。王者しか持てない重圧に負けず、初戦からの3連勝でCSを突破した。「選手の頑張りが全て」とたたえたが、この日はメリハリを目いっぱい利かせたタクトで白星をたぐり寄せた。

3番二塁に「宮本」。大事な一戦でもキャプテン山田に代えた。難敵・青柳攻略へ、9月の2試合でも打った手。今季対青柳6打数2安打1本塁打の打者を村上の前に据えた。打線は6回まで0行進も、宮本自身は青柳から1安打1四球。さらに1点差に追い上げた7回2死一、二塁でも2番手浜地から四球を選び、村上による逆転につなげた。

一方で、シーズン中は封印した手も打った。逆転直後の8回、マウンドに清水を送る。今季初の3連投。CS開幕前、リリーフ陣に「全力で、食い気味で」と求めた通り、ここぞでリミッターを解除した。思いに応え、清水は0で9回につないだ。高津監督は「毎日準備して、毎日緊張して、すごく難しいポジション。やり続けたリリーフピッチャーには本当に感謝します」と頭を下げた。

7回の逆転劇に「みんなのつないでいく気持ちがつながった」と目を細めたが、引き出したのは「受け身にならない。前々という気持ち」の采配だ。野村克也監督に並ぶ2年連続日本シリーズ出場。その恩師もなし得なかった目標がある。

「初の連続日本一を目指して頑張りたいと思います!」。

新たな歴史をつくる権利を得た。【古川真弥】

【関連記事】ヤクルトニュース一覧