うつむきながらマウンドを降りた。オリックスのエース山本由伸投手(24)が、5回途中64球で緊急降板。トレーナーとともに三塁側ベンチに引き揚げると、中嶋監督が投手交代を告げた。神宮に暗雲が垂れこめた。

球団発表は「左脇腹をつったような感覚を訴えたため、大事を取っての途中交代」。それでも試合途中にベンチに戻り、ナインを鼓舞する姿が見られた。

神宮では初先発。4年前の18年に1度リリーフで立ったことがあるだけで、慣れないマウンドが気になった。初回にオスナに三塁線ギリギリを抜かれる適時打を打たれ、いきなり2失点。味方打線に同点に追い付いてもらっても調子は上がらない。3回には塩見にポストシーズン初被弾となる左翼への勝ち越しソロを浴び、4回にはオスナにも左翼スタンドに放り込まれた。今季初の1試合2被弾…。NPB史上初の2年連続「投手4冠」を獲得した圧倒的な投球は見せられなかった。

制球、球威、キレ味。あらゆるボールを精密に操り、打者を翻弄(ほんろう)してきた。ヤクルト打線について「12球団の中でもトップレベルだと思う」と語ってきたが、この日は自身との闘いでもあった。左手のグラブが、いつもの位置になかった。思わしくなかった患部の状態をかばう投球フォームになり、強いボールを繰り出すことができなかった。

ベンチに戻り、戦況を見守る山本には笑顔も見られた。まだシリーズは始まったばかり。回復さえすれば、リベンジのチャンスはある。今は無事を祈るしかない。【真柴健】