ヨシノブが2年連続、日本のエースの称号を手にした。シーズンで最も活躍した先発投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会が24日、都内で行われ、オリックス山本由伸投手(24)がパ・リーグ史上初めて2年連続で選出された。今季は受賞基準7項目中、5項目をクリア。22日のヤクルトとの日本シリーズ第1戦(神宮)で左脇腹を痛めて緊急降板したエースは、早期回復に努めて登板機会をうかがう。

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並んだ数字は、エースの肩書にふさわしい。山本は今季15勝5敗、防御率1.68、205奪三振、勝率7割5分の成績で、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4つタイトルを獲得した。2年連続投手4冠はNPB史上初の快挙。沢村賞の受賞基準7項目の5項目もクリアし「全会一致」での2年連続沢村賞選出となった。

「2年連続で選んでいただいて、素直にうれしく思います」。連覇に導いた充実感もある。「1日1日を大切にして、真剣に練習、調整をして毎試合必死に投げた結果」と感慨深げだ。

都城(宮崎)から16年ドラフト4位で入団。新人の17年は先発だったが、18年は救援で54試合に登板してブレークを果たした。19年から本格的に先発再転向。今季で先発ローテーションを守るのは4度目だった。

春季キャンプまでに体を作り上げ、開幕に照準を合わせると「5月ごろに1回目(の疲労が)ドッとくる」と明かす。今年5月3日の敵地ソフトバンク戦は柳田にプロ初の満塁弾を浴びるなど、自己ワースト7失点。翌日から再調整に向かった。だが、その後の復調は目覚ましく、6月18日の敵地西武戦で史上86人目のノーヒットノーランを達成。シーズン最後まで波に乗り切った。

登板後は体のケアを欠かさない。筋肉の柔軟性を引き出し、関節の可動域を拡大するため、筋膜リリースをトレーナーにお願いする。ローテ定着直後は「筋肉痛と体の張りが全然取れなかった」という。そんな経験も踏まえ、今夏には「ろーたん、大丈夫そうですかね?」と初めてフル回転中だったロッテ佐々木朗を思いやったこともあった。

アクシデントも乗り越える。22日の日本シリーズ第1戦は、左脇腹を痛めて5回途中で降板。翌23日はノースロー調整で安静に努めた。予定されていた第6戦の先発マウンドは回避する見通し。患部の状況良化が最優先だが、シリーズが第7戦以降にもつれれば、マウンドに立つ可能性はある。「より高みを目指して、もっと良いピッチャーになるために、もっともっと野球と向き合いたい」。昨季逃した日本一の称号は、必ず手に入れる。【真柴健】

◆沢村賞 故沢村栄治氏の功績をたたえ、1947年(昭22)に制定。同賞受賞者または同等の成績を挙げた投手で、現役を退いた選考委員による選考委員会で決定。基準は(1)15勝以上(2)150奪三振以上(3)10完投以上(4)防御率2.50以下(5)投球回200以上(6)登板25以上(7)勝率6割以上。先発で7回以上、自責点3以下が指標の「日本版クオリティー・スタート(QS)」の達成率を含む他の成績も考慮される。89年から両リーグが対象。受賞者には金杯と副賞300万円が贈られる。

◆沢村賞選考委員(敬称略、就任順) 平松政次、堀内恒夫、北別府学(療養中のため欠席、規定により書面を提出して選考に参加)、山田久志。昨年まで務めた村田兆治は委員を辞退。

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