ロッテは4日、今季中に国内FA(フリーエージェント)権を取得していた中村奨吾内野手(30)が権利を行使せず、来季もチームに残留すると発表した。

キャプテンを務める中村奨をめぐっては今季、とても印象的なシーンがあった。7月9日のオリックス戦(ほっともっと神戸)の8回裏。リリーフ登板したゲレーロが投じた163キロ直球が、オリックス紅林のヘルメットを直撃した。

ゲレーロが危険球退場となった1球をきっかけに、両軍がホーム付近で一触即発の空気になった。明らかに動揺するゲレーロを投手コーチたちが落ち着かせる中、中村奨は脇目もふらずに不穏な場の中心へ。強いアクションで言葉を発する相手首脳陣を正面からなだめた。最後はそのまま、オリックス選手たちの中に入り収束させていった。

他のロッテ勢の誰よりも前に出た。20年オフに中村奨をキャプテンに指名した井口前監督は「選手の先頭に立ってしっかり引っ張ってほしい。背中だけというより、言葉でも伝えてほしい」と期待した。普段は大声で引っ張るタイプのリーダーではなく、首脳陣はそういう変化も求めていた。

ただ、ピンチでこそ人の本質が現れる。1人で最前線へ向かった背中に、感銘を受けた後輩選手もいた。若手投手や故障から復活した投手がマウンドで苦しんでいる時、声をかけるのはもちろん、無理な体勢から本塁封殺を狙う場面もある。就任時に「絶対的な成績を残してやっていけば、それを見てくれる人もたくさんいると思う」とリーダー像を話していたが、目立たない場面でもチームを支えている。

残留が発表されたこの日は、球団を通じて「まだ優勝できていないので、このチームで優勝をしたいという思いが強いですし、今はその思いがより強くなりました」とコメントした。派手なアピールや言葉で表現するタイプではない。縁の下のパワフルキャプテン。中村奨吾の残留はロッテにとって大きい。【金子真仁】

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