指揮官が動いた。7日、高知・安芸での阪神秋季キャンプ。ブルペンに緊張感が走った。聞こえるのは投手の吐息と甲高い捕球音。引き締まった空気が正午すぎのブルペンをつつんだ。張り詰めた雰囲気の主は岡田彰布監督(64)。一瞬で場の空気を変えた。

第2クール3日目を迎え、岡田監督がこのキャンプ初めて投手側からブルペンの投げ込みを見つめた。これまではネットをはさんだ捕手側から見ていた。この日の序盤もこれまでと同様に本塁の後ろから目をやっていた。

だが、ブルペン投球が終盤に入ったころ。9人がすでに投げ込みを終え、残っていたのは西純矢投手(21)と及川雅貴投手(21)。指揮官がおもむろに腰を上げた。

及川の横を通り、西純のうしろにあった木のベンチに腰掛けた。それからは、凝視。約30分間、背番号15に熱視線を送り続けた。

西純も気合が入る。今秋自身最多の105球の熱投。額の汗を何度も拭った。

「最初は気付かなかったが、途中で気付いた。しっかり投げられた」。充実の投球を重ね、胸を張った。

締めの1球。外角低めに刺さると指揮官も、思わずうなずいた。「緊張感はあったが、試合でももっとすごい緊張感の中でマウンドに立たないといけない。あれくらいじゃ大丈夫」と西純。今季6勝を挙げた3年目右腕は、監督の視線くらいでは動じなかった。

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