WBC日本代表の日本ハム伊藤大海投手(25)が8日、沖縄・名護キャンプでブルペン入りし、山なりの超スローカーブを披露した。WBC使用球でも、昨季の球宴でファンを沸かせた世界でも類を見ない魔球の扱いに手応えを得たもよう。堂々と世界の強打者たちを相手にしても投げる可能性を示唆した。9日は今季初実戦となる韓国サムスンとの練習試合(名護)で中継ぎ登板する。

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伊藤は捕手へ向かって伝えた。「スローカーブ」。ブルペンの屋根の高さを気にしながら投じたのは、あの山なりの超スローカーブだった。3球続けて判定はボールだったが、徐々に感覚は研ぎ澄まされ、4球目はついにストライク。思わず、笑みがこぼれた。

伊藤 バロメーターじゃないですけど、あれがしっかりコントロール出来る時は、すごく体のメカニック的に良く投げられている時。今日、4球目で(ストライクが)入ったんですけど、1球目で出来るようにしたいなと思います。

投球フォームのバランスやリリースポイントなど、全てが合致していないと投げきれない魔球。「NPB球の方が投げやすい」と苦笑いするが、手になじんできたWBC使用球でも簡単にアジャストし、大きな自信が宿った。WBC本番でも、投げる? 

伊藤 もし打たれたら…まあ、投げます。もちろん点差にもよりますし。いつも思い付きで投げるので、ひらめいたタイミングでいくかもしれない。

世界の強打者たちへ向けて、堂々と超スローカーブを投げることを予告した。

昨季の球宴でも投じて、計測不能な放物線でファンを沸かせた。ただ、公式戦でもプロ1年目から時折、投じてきた大事な球種でもある。そんな経験値や知見を踏まえ、WBCでも投げる価値を見いだしている。

伊藤 意外と向こう(メジャー)の試合を見てると、そういうボールに苦戦している選手って多くいる。確実に低めに投げられる自信があるんだったら、勝負球で使うんじゃなくて、1つの見せ球として使うのは大いにあり得るかな。

9日は韓国サムスン戦で今季初実戦に臨む。WBCで想定される役割の中継ぎ登板の予定だ。情報戦も激しい国際大会だが、自身の調整だけを見据えた。「普通に投げようかな、と。追いロジンくらいですかね、隠すのは」と、自信ありの伊藤が描く放物線は、きっと栄光への架け橋となる。【木下大輔】

◆伊藤とスローカーブ 公式戦で度々、100キロ未満のスローカーブを投げている。新人だった21年7月1日の楽天戦で「真面目に投球しすぎていた」と4回にカスティーヨに96キロを投じ、三振を奪った。昨年8月9日の西武戦では、4回2死で迎えた4番山川に計測不能の山なりボールを投げ(判定はボール)、揺さぶった。また昨年7月、初出場となったオールスターでは「オールスター最遅を狙おうかなと思います」と宣言。予告通り、8回全セ先頭の広島岩倉への初球、山なりの球を投げ、あまりに遅くて計測不能だった。タイミングを合わされながらも右飛に打ち取った。

◆日本ハム伊藤がWBCで想定される役割 チームでは先発だが、侍ジャパンでは21年東京五輪に続いて中継ぎを任されることが濃厚。昨年11月の侍ジャパン対巨人戦で延長タイブレークの練習が行われた際にも登板。NPB公式戦では導入されていないタイブレーク時の登板やセットアッパー、ピンチを迎えた際の火消し役など、あらゆる状況への対応力の高さを生かせる出番が多くなる可能性がある。

○…阪神でスペシャルアンバサダーを務めるOBの糸井嘉男氏が、名護キャンプを訪れた。特設ステージ上に座る新庄監督と会話したが、内容については「言われへん」。気になる選手を「糸井、万波、糸井、ジェームス」と冗談を交えながら挙げ「今川君とかもいい角度を持った打撃をする」と評した。今季の日本ハムの印象については「『新庄イズム』がすごい。楽しみな選手は見る限り多いですね」と語った。

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