サイ・ヤング賞投手の投球術の一端を披露した。DeNAに新加入したトレバー・バウアー投手(32)が16日、イースタン・リーグの西武戦(横須賀)に来日後初登板初先発。4回を4安打無失点、最速は球団計測で156キロをマークした。

高めの速球、右打者の外角へのバックドアなどを駆使し、6奪三振。21年6月以来の実戦ながら、本気の投球で集まった2680人のファンを酔わせた。

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バウアーが、リミッターを解除した。0-0の3回1死二、三塁。西武のドラフト1位ルーキー蛭間への3球目だった。こん身の155キロの速球で空を切らせ、次打者の高木も152キロの速球で2者連続で3球三振。蛭間の初球から6球連続速球勝負でピンチを脱し、力強く拳を握った。

「どれくらいの出力が出せるのかを確認するすごくいいチャンスだったし、いい感覚で投げられた」

オール速球勝負、それも全てが狙い通りに高めで空を切らせたことが、サイ・ヤング賞投手のすごみを物語った。事前に捕手の益子に「(速球は)ベルトから太ももの間にミットを構えてくれ」と要望。「そこを狙って、ベルトから胸あたりに一番強いボールがいくから」と説明した言葉通りの剛速球を投げ込んだ。

パワーピッチングとともに、超メジャー級の技でも驚かせた。4回無死、陽川を外角からストライクゾーンに入ってくるツーシームのバックドアで見逃し三振。相手の長谷川も、受けた益子も「えぐい」と口をそろえた伝家の宝刀のスライダーでも2三振を奪った。

ドジャース時代の21年6月に女性に対する暴行疑惑が浮上し、制限リスト入り。約1年10カ月ぶりの実戦をエンジョイした。初回を無失点に抑えた直後には、刀をさやにおさめる“ソードパフォーマンス”を披露。「ソードの状況だったので。すごく自分自身も楽しめた」と笑った。

私生活では電車通勤やスポーツ店を訪れ、ボールパークドットコム社の「和牛JB」グラブを購入し、この日の登板でも使用。米国では投球前に8~10球の投球練習が可能だが、日本では5球で、肩を温めるために投球前に腕を振る日本式も導入した。「100%に近いものが出せたんじゃないか」。次回登板も2軍戦で先発の予定。5月上旬の1軍デビューを視野に、調整の段階を上げる。【久保賢吾】

◆トレバー・バウアー 1991年1月17日生まれ、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大ロサンゼルス校から11年ドラフト1巡目(全体3位)でダイヤモンドバックス入り。インディアンス(現ガーディアンズ)を経て19年7月にレッズ移籍。コロナ禍のため短縮シーズンになった20年に防御率1・73で最優秀防御率に輝き、サイ・ヤング賞受賞。21年ドジャースへ移籍し、今年1月に契約解除。通算222試合、83勝69敗1セーブ、防御率3・79。185センチ、92キロ。右投げ右打ち。DeNAとは1年契約で、年俸は出来高払いを含め総額300万ドル(約4億500万円)。

◆DeNA益子(ボールを受けたバウアーの速球に)「(投げる時に)沈み込んでリリースポイントが低くて、打者からしたら浮き上がってくるような感じで、球速以上のものを感じると思います」