乳白色の1杯が白星を呼び込んだ。西武ディートリック・エンス投手(31)が6回無安打無失点で今季1勝目を挙げた。

1回から3回にかけ、球団歴代3位となる7者連続奪三振と、日本ハム打線を押し込んだ。右打者外角からストライクゾーンに入れ込むカットボールが特にさえた。「試合序盤にかなり有効な球になるなというのはあったので。柘植もおそらくそう思って出ていたサインだったと思います」。柘植世那捕手(25)と際どいコースを徹底した。

6回91球と球数が増え始め、ノーヒットノーランの権利を保有しながら、ここでお役御免に。「中継ぎもすごく信頼できる投手が多いので、後は任せたというところでした」と7回以降をリリーフ陣に託した。終盤に2失点はしたものの、佐藤隼やティノコらの粘りもあり、仲間たちと勝利を喜び合った。

先発陣の中でも争いはハードだ。高橋は18イニング連続無失点、今井は8回1死までノーヒットノーラン、平良は2戦17奪三振。その中で助っ人左腕は2敗、防御率8点台。人知れず悩んだ。「本当に素晴らしい投手がそろっている。自分はまだ、自分の投球を今シーズン見せられていないところはある。自分もやらなきゃなという気持ちがある」。技術をしっかり見つめ直し、勝負の3戦目は大事なルーティンも行った。

飲んでげんを担ぐ。その名もソフトカツゲン。主に北海道で売られているご当地乳酸菌飲料だ。出会いは来日した昨年のこと。札幌市出身で、実家の冷蔵庫には牛乳とともに1リットルパックのソフトカツゲンが常備されていたという斉藤誠人捕手(27)に「これ、おいしいよ」と勧められた。飲んだ。おいしい。

「ああいうドリンクは、アメリカにももしかしたらあるのかもしれないけど、出会ったことがなくて。ヨーグルト系みたいな感じもあるんですけど、けっこう甘くて、自分の舌的にはココナツに近いかな」

大ファンになった。昨季は2度の遠征ともしっかり飲んだ。今回も北海道に飛び立つ前から「絶対飲みます。一緒に飲んで頑張りましょう!」と記者に意気揚々と宣言し、忘れることなくコンビニエンスストアで入手した。

チームメートに合わせているわけではなく、エンスのソフトカツゲン好きは割と筋金入りだ。この3月の北海道遠征では、同じ助っ人右腕のボー・タカハシ投手(26)にも推薦し“伝道師”になったほど。

ソフトカツゲンを飲む。勝つ。今回もその流れがうまくいき、日頃から丁寧で柔和なエンスは、ますます笑みがはじける。

「できれば東京に持って帰りたいと思っているよ。4リッター、1ガロンぐらい持って帰りたい」

これでひとまずチームは2位浮上となったが、まだまだシーズンは長い。メーカーによると、カツゲンの由来は「活力の給源」。チーム愛深い左腕のテンションが上がったことが、肌寒い北海道遠征の何よりの土産になった。【金子真仁】