チーム4連勝は逃したけど、ようやったで! 阪神村上頌樹投手(24)が60年ぶりにセ界記録に並んだ。

1軍甲子園デビュー戦となったヤクルト戦で先発し、6回まで無失点。63年中井悦雄(阪神)が持っていた2リーグ制後のセ・リーグ記録、開幕から31イニング連続無失点に並んだ。両チーム無得点の7回にサンタナに先制ソロを許し、記録はストップ。7回5安打1失点で初黒星を喫したが、「火曜日の男」として今や主戦級の存在感だ。

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60年ぶりの偉業を、渾身(こんしん)の直球で決めた。両チーム無得点で迎えた6回表2死一塁、1ボール2ストライク。阪神村上はヤクルト4番村上に外角低めいっぱいの144キロ直球を投げ込んだ。

「この打者を絶対に出してはいけない、というところで投げ切れたので良かったです」。「村神様」が微動だにできない1球で見逃し三振。思いきりグラブをたたいた。開幕から31イニング連続無失点。63年中井悦雄(阪神)以来60年ぶりに、2リーグ制後のセ・リーグ記録に並んだ瞬間だった。

1軍甲子園デビュー戦。「存分に楽しみたい」と燃えていた。2回無死一、二塁では5番オスナをフォークで空振り三振。6番長岡、7番古賀を捕邪飛に仕留め、ピンチを脱した。ミエセスや中野の好守備にも助けられ、勢いづいた。

甲子園は自身を成長させてくれた場所だ。智弁学園3年春のセンバツ大会はエースとして全5試合を投げ抜き、日本一投手に。だが、春夏連覇がかかった夏の甲子園はライバル校に研究し尽くされた。バッテリーと対策を練る日々。カーブやチェンジアップを多投した夏、2回戦で鳴門に屈して高校野球を終えた。

当時バッテリーを組んでいた岡沢智基(現ホンダ鈴鹿)は「終わった後はバスでずっと寝ていた。ホテルに帰るまで爆睡でアイシング。でも、頌樹のしんどい顔を見たことない」と振り返る。限界まで出し切った夏があるから、今がある。あれから約7年。進化して聖地へ帰ってきた。

連続無失点記録は7回に止まった。先頭サンタナに左中間席までソロを運ばれ、7回1失点で初黒星を喫した。とはいえ、偉大な数字は色あせない。岡田監督は「(記録に)並んだやろ、6回で。嫌な感じやったけどなあ。7回まででやめとこう言うとったんやけどな」と苦笑いしつつ「(週頭で重要な)火曜日を任せようと思うやんか。なあ」と強まる信頼感を隠さなかった。

「自分1人の力じゃない。捕手の方々や、野手の皆さんが守ってくださったおかげです。次に生かしたいなと思います」

快挙達成を謙虚に振り返った村上。小休止した快進撃はすぐさま再開させる。【三宅ひとみ】

■63年の阪神中井に並ぶ

▼村上が7回、サンタナに1発を浴び、開幕からの連続無失点が31回でストップ。開幕からの連続無失点記録は1リーグ時代の39年高橋(阪急)がマークした38回1/3、2リーグ制後は21年平良(西武)の38回だが、セ・リーグでは63年中井(阪神)に並ぶ最長記録となった。63年中井は新人で、プロ初登板から記録したもの。村上はプロ3年目も、昨年まで通算0勝1敗。セ・リーグで開幕から無失点を30回以上続けたのは中井と村上しかいないが、2人とも無失点スタート時は「プロ0勝」だった。なお、中井が失点したのは10月17日広島戦の2回で、村上と同じく藤井にソロ本塁打を浴びて止まっている。

◆中井悦雄(なかい・えつお)1943年(昭18)6月24日生まれ。大鉄(現阪南大高)2年の60年春に甲子園出場。関大を中退して63年阪神入団。20歳の同年にウエスタン・リーグでは最多勝、最優秀防御率、最高勝率の「投手3冠」を獲得。9月7日に1軍デビューを果たすと開幕から31イニング連続無失点を記録するなど、4勝をマーク。69年から西鉄でプレーし、71年引退。通算109試合登板、9勝6敗、防御率3・33。現役時代は180センチ、87キロ。右投げ右打ち。阪神2軍投手コーチ補佐時代の79年8月23日、心不全により36歳で死去。

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