父親としての“初登板”を勝利で飾った。阪神ジェレミー・ビーズリー投手(27)はウイニングボールにキスし、思いを巡らせた。

「大切な1日だった。いいピッチングできたのはすごくよかったよ」。

決戦2日前に神戸市内の病院で第1子の長男ウェスリーくんが誕生。出産を終えたブルック夫人と体重約4200グラムの愛息を見ると、涙があふれ出た。来日3度目の先発で1軍最長の5回2/3を投げ、4安打8奪三振1失点の力投。息子の名前入りグラブで、5回までは三塁すら踏ませなかった。「家族の力」を原動力に来日初勝利をつかんだ。

昨年11月に結婚した夫人との出会いは19年。エンゼルス時代に肘の手術の関係で訪れたロサンゼルスの空港だった。初対面ながら「親友みたいに話せた」と、1歳下の彼女に一目ぼれ。その場で連絡先を交換するなど意気投合し、その後交際がスタートした。

遠征で各地を飛び回る毎日。寂しさを感じつつ、遠距離恋愛を受け入れてくれたパートナーには感謝が尽きなかった。「理解のある奥さんにめぐまれたというのは幸せ。家族が僕の全てです」。これまで米国、ドミニカ共和国、カナダでプレーし、日本は4カ国目。妊娠が分かったのはチームとの契約後だった。土地、言語、文化…。心配だらけの異国での生活にも夫人は「ちょっと心配だけど、一緒に違う土地に行って一緒に頑張っていこう」。2人で来日を決断し、無事に出産。背中を押された一言が、ジャパニーズドリームへの決意となった。

岡田監督は「(体調不良の)大竹がもうちょっとかかりそうやから。巨人の時も東京ドームな、これはもうビーズリーでいかんとな」と、次回は9日巨人戦の登板が有力だ。「ちょっとでも顔みた方がええやろ」と、遠征を離れて家族の元への一時帰宅も容認した。ウイニングボールは息子へ渡す予定。大きな節目の1勝となった。【波部俊之介】

【関連記事】阪神ニュース一覧はこちら―>