世田谷西(関東連盟)が中本牧(同)を延長10回タイブレークの末、4ー3でサヨナラ勝ちして、6年ぶり5度目の優勝を果たした。リトルシニア代表として、8月27日開幕の第1回エイジェックチャンピオンシップに出場する。

9回まで2-2のまま決着がつかず、1死満塁からのタイブレークに突入した。10回表を1点でしのいだ世田谷西は2番坂本将平(3年)から始まる好打順。しかし、8回2死からリリーフの中本牧・渡辺楓(3年)の遅い変化球になかなかタイミングが合わない。粘る坂本はボールを見極め押し出し四球で同点。続く森田はギリギリまで引きつけライトフライ。降板後の中本牧エース・若杉一惺(3年)の強肩が怖かったが、三塁走者の大矢球道(3年)が猛然と本塁に滑り込み、激闘に幕を閉じた。

吉田昌弘監督は「タイブレークはどちらに転ぶかわからない運のもの。試合前から中本牧さんの方が力は上だと思っていました。監督がいたらない分、選手がよくやってくれました」と振り返ったように、苦しい展開だった。1回表の先頭打者の中本牧・下茂汰介(3年)にいきなり三塁打を浴びるなど打者3人で先制された。しかし、そこから先発の安藤丈二(3年)が6回まで無失点でしのぐ。吉田監督が「安藤の快投なくして優勝はない」と激励した右腕の直球と変化球が低めで切れた。

奮起した打線は5回裏に遠嶋康大(3年)の二塁打と安藤の中前打で同点。6回裏には満を持して登板した若杉から坂本将平(3年)がいきなりタイムリーを放ち、1点勝ち越した。

しかし、7回表にタイムリーエラーで同点とされ、9回まで我慢比べが続いた。結果的に2番手でマウンドを託された大矢球道(2年)が7回、10回と最少失点でしのいだのが、逆転サヨナラにつながった。

秋の関東大会は3位、春の全国選抜は3回戦で姿を消した。例年のチームのように飛び抜けたスター選手はいないが、冬場に鍛えて春の関東は準優勝、夏は関東王者となり、日本選手権に臨んだ。2回戦で関東のライバル東練馬を3-5で破り勢いにのり、準決勝で青森山田の3連覇を1点差で阻止して決勝に進出した。

吉田監督は今年のチームを「まとまりすぎるほどまとまっている」と評す。個々の能力の高さで中学球界を席巻してきた常勝軍団が、チーム力で勝ち抜いてきた。ひと味違う「セタニシ」がシニア王者として、史上初の中学硬式野球5団体の優勝チームが集まる、エイジェックチャンピオンシップに進出する。初戦は28日にポニーリーグ王者のポニー佐賀ビクトリーと対する。勝てば29日に阪神甲子園球場で行われる決勝戦に進出する。

 

【中本牧は全国『青』覇に一歩足らず】

同点とされた10回裏、中本牧ナインも応援席もライト上空を見上げた。守っているのはエース若杉。「若杉なら…」と願った飛球は思いのほか伸びた。若杉は「無理かもな」と思いつつ、全力でバックホーム。大遠投は一塁側にそれて、伝統の青ユニホーム軍団の「全国『青』覇」はならなかった。

前日の先発登板で球数制限があった若杉はこの日、3番手で登板。同点のタイムリーを許したものの、追加点は与えず、4番手の渡辺につないだ。試合後、「セタニシが一枚上だったんです」と話したが、その世田谷西に昨年秋の関東大会3位決定戦で大敗。冬場の猛トレーニングを経て、春の全国選抜大会は4強。若杉を中心に7人全員が左腕という強力投手陣が「全国『青』覇」に現実味を帯びさせた。浅沼慈道主将(3年)によると「トーナメントを勝ち抜くには体力が必要」とトレーニングの内容をさらに濃くして、4年ぶりに日本選手権に帰ってきた。

19年ぶり3度目の優勝を逃した75歳の村上林吉監督は「選手が全力を尽くして負けたのだから、監督が悪い。いい勉強になったし、彼らにはまだありますから」と話した。15日開幕のジャイアンツカップに神奈川代表として出場する。「全国『青』覇」の夢はまだ終わっていない。

▼表彰選手【最優秀選手】大矢球道(世田谷西)【敢闘賞】若杉一惺(中本牧)【優秀選手】遠嶋康大、仙波晴弥(世田谷西)、小林鉄三郎(中本牧)、越沼優悟、光岡駿(青森山田)、朝来友翔、石田翔大(取手)【ベストナイン】投手=安藤丈二(世田谷西)、捕手=浅沼慈道(中本牧)、一塁手=藤川哲(青森山田)、二塁手=大竹乾汰(中本牧)、三塁手=下茂汰介(中本牧)、遊撃手=大寳瑛都(世田谷西)、外野手=高野玲樹(取手)、矢口翔大、坂本将平(世田谷西)