滋賀大の若林大雅内野手(4年=天白)が初の打点王に迫った。阪神佐藤輝明の体格を思わせる187センチ、92キロの大型スラッガーは、初回に先制打を放ち、打点をリーグトップの「11」とした。

「若さん」と親しまれる唯一の4年生メンバーで、試合中は攻守関係なく、穴が開いても使い続ける打撃用手袋をはめ、仲間を鼓舞する。「ないと落ち着かなくて。ボロボロっす。(使い続けるのは)お金がないからっす」。

入学前の硬式野球歴は、中学での3カ月間だけ。高校時代は硬式野球部の体験入部でついていけずバレーボール部に所属するも、硬式野球への憧れを捨てられなかった。

「奇跡的に受かった」と1浪の末、国立大の同大学へ合格。入部直後は、グラブ以外は先輩からのお下がりで道具をそろえ、塁間の送球やバットにボールを当てることができなかった。「うまい人のまねをしたり考え方を教わって。マネジャーにはビデオを撮ってもらって、それを自主練で落としこんで、みんなにフィードバックをもらって」。3年春にリーグ戦初出場し、スタメンに定着した今秋には、初アーチが飛び出した。

1人暮らしの部屋で肉体改造のため、自炊にも奮闘した。「最初は70キロでポッキーみたいに細長かったので。鶏肉と白米を食べて、増やしました(笑い)」。

後輩の千田桜司郎内野手(3年=高岡商)も「雰囲気をよくしてくれて、チームの打点も稼いでくれています」と信頼を口にした。小倉圭監督(34)も努力を陰ながら見守った。「正直、かなりすごいです。言われたことを素直に取り組んだ結果が今なので。尊敬に値すべきです」。

リーグ戦終了後は、ゼミの活動の一環で3カ月間アメリカへ留学する。異色の経歴で4番にのし上がった若林は、18日の3回戦をもって引退する。「人生好きなことをやってみて、挫折から学ぶことはいっぱいあった。本当はもっと続けたかったけど。守備がレベルアップできなかった」と悔やんだが「語学力を高めて、将来はグローバルな企業で働いてみたい」。バットからペンに持ち替えて、未来を見据えた4番は、次の夢もかなえる。【中島麗】

◆若林大雅(わかばやし・たいが)2000年(平12)6月12日、愛知県名古屋市出身。高針小3年から「高針フォーティス」でソフトボールを始め、高針台中時代は硬式の「K's Baseball Club Young」に3カ月間所属後軟式野球部に入部。天白高のバレーボール部では、ミドルブロッカー。大学では3年春から公式戦に出場。好きな選手は中日のアルモンテ。187センチ、92キロ。右投げ右打ち。大学入学直後でコロナ禍の2020年4月から半年間は、バンテリンドームナゴヤで観客誘導のアルバイトを経験した。