オリックスがスペイン語通訳として、阪神園芸職員など異色の経歴を持つ柴田凌氏(26)と契約することが5日、分かった。柴田氏は甲子園春夏通算104勝の名門・龍谷大平安(京都)出身。現役時代はレギュラーの壁が厚く、三塁コーチを志願して仲間を支えた。履正社医療スポーツ専門学校卒業後の18年4月、野球に携わる仕事がしたいと、阪神園芸株式会社に入社。甲子園や鳴尾浜球場を職場とし、「神整備」と称される職人集団の一員として4年間、ライン引きやトンボがけの整備を担った。

勤務中、バックヤードで阪神の外国人選手をサポートする通訳の姿に憧れを抱き、語学を学びたいと思うようになった。阪神橘佳祐通訳のサポートを受け、つてのあったスペイン語圏のコロンビア行きを決断。22年6月の退職後、現地に2度渡り、野球を週5回、子どもたちに指導した。トータル6カ月の滞在でスペイン語をスピード習得した。

オリックスは今オフ、新助っ人でマチャド、カスティーヨ、エスピノーザとスペイン語圏の3選手を獲得。残留したゴンザレスとセデーニョも含めてスペイン語を話す助っ人が5人の大所帯となり、昨秋通訳を募集していた。柴田氏は知人からの知らせで応募。2度の面接では、堪能になったスペイン語やアグレッシブな行動力をアピール。今年1月に採用が決まった。

「選手が異国の地でも思い切ってプレーできるように、野球以外でも全面的にサポートしたい」と意気込む。高校同期のヤクルト高橋奎二との再会も楽しみで「グラウンドで会えるのは特別ですし、理想ですね」と夢を膨らませる。

今月中旬、宮崎キャンプでチームに合流する。「言語の面だけでなく、今は選手の近くにいるべきか? 選手同士の輪から離れるべきか? といった場の見極めも」。黒子に徹し、パフォーマンス発揮に全力を尽くす。スペイン語圏の助っ人がお立ち台に立った時は、ぜひ柴田通訳にもご注目を。【中島麗】

○…龍谷大平安の原田英彦監督(63)は「不慣れな世界かもわからないけど、失敗を恐れず突き進め! トライ・エヴリシング」とエールを送った。ディズニー好きの指揮官が、映画「ズートピア」の主題歌名を用い、教え子の活躍を願った。コロンビアに渡った後も、写真を添えたLINE報告やOB戦で交流を継続。新天地でも温かく見守る。

◆柴田凌(しばた・りょう)1997(平10)年8月11日生まれ、兵庫県伊丹市出身。中学時代は伊丹シニアでプレー。龍谷大平安(京都)では3年時のセンバツで背番号18の外野手でベンチ入り。履正社医療スポーツ専門学校時代のアルバイト実習で、阪神園芸でグラウンド整備したことが、同社入社のきっかけ。18年夏の甲子園100回大会で、龍谷大平安が春夏通算100勝を達成した鳥取城北戦では、勝利の校歌が流れる中、バックスクリーン裏で校旗掲揚を担当した。好きな言葉は「練習は実戦のように。実戦は練習のように」。