実は阪神は、令和の最強軍団だ。2019年5月1日に平成から元号が変わって以降、346勝287敗31分け、勝率5割4分7厘。矢野前監督と岡田監督の5年間で積み重ねた勝率、勝利数とも12球団最高だ。岡田監督が率いて18年ぶりリーグ優勝を果たした昨年、ソフトバンクを抜いて令和最強に躍り出た。

この間、すべての年でAクラス入りしているのは阪神しかない。両リーグを見渡しても、Bクラスの回数が少ないのは、ソフトバンクの1度(令和3年4位)だけ。阪神の安定感は特筆に値する。

お家芸の投手力が、令和の阪神を押し上げた。元年にオリックスから西勇がFAで加わり、一気に厚みを増した。青柳がエースに台頭し、伊藤将も着実に力をつけた。昨年は村上、大竹が急成長。この結果、チーム防御率は、両リーグ最良の3・05となった。2位ソフトバンクの3・26を大きく引き離し、断トツの数字だ。

一方で、チーム打率は2割4分7厘1毛で、12球団6位と平凡である。また、472本塁打はワースト3位で、最多の巨人779本塁打の6割強にとどまっている。

攻撃力不足は、メンバーの固定で補った。規定打席に到達した選手はのべ28人で、両リーグで最も多い。令和3年には、実に8人が規定打席を満たした。これは2リーグ分立後球界12度目で、球団では昭和25年(1950年)以来71年ぶり2度目だった。

生え抜きが続々とレギュラーに定着している点も見逃せない。平成16年(2004年)に入団した鳥谷敬の規定打席到達は、13度にのぼった。ところがこの間、ドラフト入団した選手の規定打席到達も13度しかなかった。令和に入り、状況は一変。近本、大山は全5シーズンで満たし、佐藤輝と中野はプロ入り3年間連続で到達。5シーズンで、生え抜きの規定打席到達は計22度にのぼった。

また、469盗塁も12球団最多。近本144個+中野73個で計217盗塁にのぼり、最少DeNAのチーム盗塁数180を軽く上回る。機動力も令和阪神の重要な武器である。

NPB全体を見ると、令和にプロ入りした選手のタイトル獲得は20度。うち阪神の選手が、半数近い9度を占める。近本、湯浅、中野、村上の4人が栄冠に輝いた。複数の令和入団選手がタイトルを取っているのは、阪神だけだ。近本は1人で5年連続獲得とタイトルの常連で、チームをけん引し続けている。阪神の令和での強さが、ここにも表れている。

昭和、平成とも球界は巨人の天下だった。永遠のライバルは昭和に3675勝、勝率6割5厘。平成は2263勝、5割5分2厘。ともに球界最高成績だった。

令和になって、勢力図は塗り替わりつつある。若い選手が力をつけ、円熟采配の岡田監督が手綱を締める。令和の常勝軍団が、その地位を固める年になる。

【記録室=高野勲】(22年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」準優勝)

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