長崎・諫早農業高2年時は、最速141キロだった。同3年で145キロ。そこから3年間で、160キロを射程圏内に捉えた。

最速157キロ右腕の愛知工大・中村優斗(3年)が、納得の侍デビューを果たした。1点リードの3回から登板。先発・金丸の後を継いだ。「前のピッチャーが金丸で、それよりいいピッチングとしたいと思っていました」。1死から2人目の初球で、自己最速タイの157キロをマーク。1回を無安打無失点。11球の内、直球は7球で全てが150キロ後半台と存在感を示した。「157キロを今回出すことができて、あと3キロで160キロっていう大舞台に行けるんですけど、ほんとに一番は制球力っていうのがもう自分の武器だと思ってるので、そこは見失わないように160キロを出せるようなトレーニングをしていきたい」と青写真を描いた。

かつては公務員になることが夢だった。「特にやりたいこともなくて…野球も全然すごくなかったので、現実的に」と考えていた。諫早農を選んだのも、就職を考えてのこと。同校の農業土木科では、測量、水道系などを学んだ。

ただ、高校最後の年で145キロを出したことで目標が変わった。「そこから大学で野球をしたいっていう気持ちになりました」。そして夢はどんどん大きくなった。「まずは大学で力をつけて、ゆくゆくはプロに行きたいと思っていた」。

大学生になり、さらに野望は広がった。「大学に入ったからには野球で生活するというか、大学4年生でドラフト1位でプロに行く思いっていうのは、大学入った瞬間にもう決めてたので、4年生への照準合わせて1年生の頃からトレーニングしていました」と努力を続けてきた。

昨年12月。愛媛・松山での大学日本代表候補の合宿に参加。視察に訪れた井端監督の前で、自己最速を更新する157キロをマークし、今回の侍初招集を勝ち取った。

思い描いた未来は、現実に近づいている。今回の侍ジャパンでの時間も無駄にはしない。「皆さん油物とか炭水化物を気にされていて、やっぱりプロの一流の方は食事面も気にしているんだなっていう感想です」。地元・長崎の先輩・西武隅田の投球術も生きた教材となった。特に隅田の代名詞・チェンジアップは驚きのものだった。「本当に今まで見たことないような変化球で、こうやって真横で見ることができて、ほんとにいい機会になったなと思います。普通のチェンジアップは遅いと思うんですけど、隅田投手は止まりながら落ちるっていうか、本当に今まで見たことないようなチェンジアップで投げ方も教えてもらったので、そこは練習していこうかなと思います」とうなずいた。

侍での日々を終え、また鍛錬の日々が始まる。「今回一緒に試合をした方たちのようなピッチャーになれるように今後1年間頑張りたい」と意気込みを口にした。「またこのユニホームを着てプレーをしたいっていう気持ちは強いです」。夢の160キロ、ドラフト1指名を現実のものとし、再び侍に帰ってくる。【栗田尚樹】

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