阪神前川右京外野手(20)は巧みな流し打ちを決めると、右手をベンチに突き上げた。

自身初の開幕スタメン。2回1死で迎えた第1打席、巨人戸郷の5球目だ。カウント2ー2から127キロ外角低めのカーブを泳がされながらもミートし、ライナーで左前に運んだ。「追い込まれて、ちゃんと反対方向に対応できた。結構緊張してたんですけど、その中で少しは結果が出てよかった」。今季初安打。一塁ベースを回ると、頭上で手をたたいた。

1番近本から8番木浪まで昨季の日本一メンバーが大半を占める中、唯一スタメンに割って入ったのが前川だ。4回2死走者なしでの第2打席では8球粘り、9球目で四球。「追い込まれて、なんとか食らいつこうという感じで選べたので、内容のある打席だったかなと思います」。今季から本格的に入った左翼の守備では2回、智弁学園(奈良)の先輩、4番岡本の左中間への打球をフェンスにぶつかりながらつかんだ。

攻守で存在感を示し、岡田監督のスタメン起用に応えた。春季キャンプでは野手MVPに選ばれ、オープン戦では右投手相手に3割5分9厘と結果を残した。球団の高卒3年目での開幕スタメンは16年の横田慎太郎氏以来8年ぶり。指揮官も「打つと思っているから右ピッチャーで使うって言うてるんやから。ええもんじゃない。それは。普通。そうやろ?」と実力を評価した。自らつかんだチャンスで、昨季4打数2安打と好相性を誇る戸郷を打った。

ただ、30日の開幕2戦目は左投手相手で左翼ノイジーの先発が濃厚。激しいレギュラー争いはまだまだ続く。「今日は今日で明日は明日。良かったこと、悪かったこと、ホテルに帰ってちゃんと考え直して、また明日に入りたいと思います」。新猛虎打線の一員として、若武者が力強く24年シーズンを走り出した。【村松万里子】

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