慶大がスター2人の躍動もあって、東大に連勝で勝ち点を挙げた。初回、4番清原正吾内野手(4年=慶応)が2戦連続の適時打。母亜希さんの誕生日に花を添えた。また昨夏の甲子園優勝に貢献した丸田湊斗外野手(1年=慶応)も代打で安打デビューした。立大では大越怜投手(3年=東筑)がかつて父基氏もプレーした早大を5回1失点にまとめ、神宮初勝利。1勝1敗のタイに戻した。

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清原は初回、2試合連続の適時打を放ち、一塁上ですがすがしい顔になった。右翼への一打を「けっこう自分の中では完璧な当たりでした」と満足そうに振り返り「いつも支えてくださってる偉大なお母さんなんで、打点を挙げられて少しホッとしました」とバースデーヒットを喜んだ。

誕生日を迎えた母への感謝を常に忘れない。この日も観戦した父の事件が明るみに出たのは、長男の正吾が14歳の時だった。当時の母の姿を今も忘れない。

「あのころ、お母さんは僕たち兄弟の前で涙一つ見せなかったんです。本当に。いつも元気に『おはよう!』『おやすみ!』って言ってくれて」

報道の翌日、学校へ行くのが「おっくうでした」と振り返る。でも当時11歳の弟勝児との約束があった。「事件の後、兄弟2人で一度話し合ったんです。僕たちはこれからもう、絶対にお母さんに迷惑かけないようにしよう、って」

子ども心の心配をよそに、母はいつも笑顔だった。「そのおかげで僕たち2人、学校へ1日も休まずに行けたんですよ」。心の苦しみを理解してくれる級友たちと、何よりも明るい母がいたから今がある。

バースデーアーチを-。「そのために必死に練習してます」と開幕前から燃えた。本塁打とはならなかったけれど「自分の中では完璧な当たりだった」から、思いは十分に打球にこもった。何よりも歓声を浴びて野球する姿が、いま一番の贈りものだ。【金子真仁】