独走する猛虎には鬼門も難敵も関係ない。阪神が唯一負け越している中日に連夜の逆転勝ちだ。リードオフマン近本光司外野手(30)が4安打と大暴れ。延長10回には先頭で左前打を放ち勝ち越し点につなげるなど、全3得点に絡んだ。4安打固め打ちで打率は2割9分2厘まで上昇。122安打、26盗塁とともにリーグ3冠だ。チームは優勝マジックを1つ減らして32。貯金を今季最多24まで増やした。
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近本はゆっくりと、三塁ベースからかえってきた。延長10回1死満塁。押し出し死球で勝ち越しの生還を果たし、うずくまる大山を優しくさすった。この日の全得点に絡んだリードオフマン。決勝のホームは自らが踏んだ。
「長い試合でしたけど。勝てたので良かったです」
同点の延長10回先頭。「とにかく出ようという気持ちで」打席に立った。左腕橋本から三遊間を破る左前打で出塁。この日4本目の安打から好機が生まれ、勝ち越し劇につながった。3回には8試合ぶり打点となる左前適時打。6回、8回にも安打を重ねた。チャンスメークに適時打と幅広い活躍で、今季5度目の4安打を決めた。
これで9試合連続安打。8月に入ってからは全試合で安打を放ち、この日で打率は2割9分2厘まで上昇した。首位打者争いを続ける中野や広島小園を一気に抜き去り、一気にセ・リーグトップ。安打数122、26盗塁とともに打撃タイトル3冠だ。それでも「まだ8月に入ったばかり。あと何試合もあるので。まだまだ先です」と目の前の一戦だけを見据えて臨む。
今季は全試合で「1番中堅」出場。1番打者にとって、敵地での仕事のひとつが「始球式」の打者役だ。老若男女問わず、マウンドにはあらゆるファンが上がる。野球経験者ばかりではない中、どんなボールも常にフルスイングするのが近本流だ。試合開始直前の1球。だが意識付けの裏にあるのは集中を高めるためでも、1打席目のイメージを膨らませるためでもない。
「一生に1回しかない、緊張している場面でファーストピッチを投げられるので。それはこっちも真剣にちゃんとしたスイングを、とは思っています」
この日も野球少年のワンバウンド投球に渾身(こんしん)の一振りで応えた。プレーだけではない。細部の振る舞いから、プロ野球選手としての責任を果たし続けている。
チームは優勝マジックを32に減らし、貯金は今季最多24。唯一負け越していた中日との対戦成績も7勝7敗となった。「1試合1試合が大事。1勝ずつ積み上げて、みなさんで楽しみましょう」。歓喜の瞬間まで、頼もしく打線をけん引し続ける。【波部俊之介】



