【02年9月10日付・日刊スポーツ】

 ドジャース石井一久投手(29)がアクシデントに襲われた。アストロズ戦の4回、ハンター外野手のライナーが石井の左前頭部を直撃。そのまま救急車でロス市内の病院に運ばれた。検査の結果、頭がい骨に小さな亀裂が入り、緊急入院する事態となった。意識ははっきりしており病院で24時間態勢で経過を見守ることになったが、残り3週間となったレギュラーシーズン中に復帰できるかは微妙な状況だ。

 鈍い音が球場に響きわたった。鋭いライナーが石井の前頭部を直撃し、マウンドで倒れ込む。左手で額を抑えたまま動かない。シーンと静まりかえるスタンド。緊急事態が発生したのは4回表だった。

 1死一、二塁。カウント2−3からハンター外野手の放ったライナーが石井を襲う。グラブを差し出したが間に合わずボールは20

 メートル

 以上先のバックネット前まで跳ね返るほど凄まじい衝撃だった。試合は即座に中断。こん倒する石井を心配して両軍関係者が集まる中、救急車の出動が要請されマウンド横まで入り込む。脳しんとうを起こし、出血もあった石井は担架で固定されたまま市内の救急病院へ運びこまれた。

 1時間30分後、球団から「CTスキャンなどによる検査の結果、頭がい骨に小さな亀裂がある」と発表された。意識は戻ったというものの、入院して集中治療室で24時間の経過を見守ることになった。

 心に期して上がったマウンドだった。地区優勝の可能性を残す一方で、プレーオフ出場を争うジャイアンツが激しく追い上げている。きょう9日からそのジ軍の敵地で3連戦が控える。石井は早めに球場入りし、深沢トレーナー相手に軽い投球練習でエンジンをかけていた。だが夕日がマウンドに差し込む悪条件の中で3回までソロ2発で2点を失っていた。4回になるとマウンド付近が逆に影に覆われる。リズムを崩すように2四球を出し、直後にアクシデントに見舞われた。

 降板後、ド軍は終盤に反撃したが届かず敗れた。トレーシー監督は「(石井は)影もあって打球が見えにくかったのだろう。出血しあまり良くない状態に見えたが、言葉も話していた。(検査の結果)命に危険はないから良かった」と話し、「彼は文化の違いもある中でここまで14勝もして良くやってくれた。今後は一切、白紙」と故障者リスト入りさせ、治療に専念させることを示唆。残り3週間となった公式戦での復帰は微妙。10月開幕のプレーオフには何とか間に合わせたいところだが…。

 病院には球団関係者やロス市内の自宅から彩子夫人も駆けつけた。スタン・ジョンソン主任トレーナーによれば「今後は明日(9日=日本時間10日)の結果を見ないと分からないが、冗談も言えるし夫人も付き添っている。体調の異変とかは出ていない」と最悪の事態は回避したことを告げた。シーズン大詰めでチームを襲った非常事態。ド軍ナインは石井を気遣いながらサンフランシスコへ移動した。【田

 誠】