<オープン戦:中日4-6日本ハム>◇8日◇ナゴヤドーム

 中日井上一樹外野手(37)が、日本ハム戦で今季初安打を記録した。5回に代打で登場。先発スウィーニーから中前打を放ち、1打席でベンチに下がった。キャンプは故障をしていないにもかかわらず全日程を2軍で過ごし、6日1軍合流したばかり。ベテランスラッガーは、1打席1打席に魂を込め開幕ロースター入りを狙う。

 シンを外された鈍い当たりが投手スウィーニーの差し出すグラブをかすめた。さらに二塁手稲田のグラブもすり抜け中前へ。一塁に駆け込んだ井上は、ベース上でホッと息をついた。「オープン戦だけど“初日”が出てよかった。ああいう渋いヒットでよかった」。同点の5回、代打の打席。泥臭い今季初安打を、照れくさそうに振り返った。

 今年38歳を迎える20年目。昨年は主軸も打っているが、キャンプでは1度も1軍に呼ばれなかった。サトウキビ畑にかこまれた2軍読谷球場で1カ月。不安を打ち消すように、あえて声をからして若手を引っ張ってきた。「プライドを捨てないとだめ。でも、お前らとは違うんだぞというプライドはずっと持っていた」。必要とされる瞬間を信じ、ひたすらバットを振った。6日に1軍合流し、代打で途中出場した初打席は四球。この日が今季3打席目だった。

 置かれた環境が厳しいことはわかっている。外野は左翼和田、右翼李の布陣となる可能性が高く、中堅は売り出し中の藤井とルーキー野本の競争だ。代打では同じ左打者に切り札立浪がおり、井上が多くのチャンスをもらえる状況ではない。オープン戦の1打席1打席を、シビアに見極められている。

 次戦に向け表情は引き締まる。「まあ、まあ、まだ“初日”が出ただけだから」。どんな形でもいい。結果を出し続け、何としても開幕1軍切符をもぎ取る。【村野

 森】

 [2009年3月9日10時39分

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