今春開幕した関西独立リーグが各球団への分配金遅延問題で、紀州、大阪、神戸、明石の加盟4球団で運営していくことが20日、決定した。和歌山市内で4球団と来年加入する三重の各球団代表が会見し、運営会社の「ステラ」がこの問題の責任をとって撤退し、今後は合議制で運営していくことを発表。だが資金難は変わらず、女性初のプロ野球選手として注目の神戸・吉田えり投手(17)も含め、選手は給与カットやリストラも含めた苦境に直面する。

 神戸の広田和代社長(48)は涙を浮かべた。明石の大村節二社長(73)は「むなしい…」とうなった。大阪の浦野聖史社長(33)は「今でも信じたい気持ちはあります」と声を絞り出し、紀州の竹中則行社長(41)は「今まで言ってきたことと何も変わらんやないですか」とため息。そして三重の壁矢慶一郎社長(63)は「飾らんと本当のことを言うてよ!」と迫った。薄ら笑いを浮かべていたリーグ運営事務局・中村明代表(47)の顔がこわばった。

 紀州の木村竹志代表(47)の「さっきまでの(会議での)話とあまりに違うので、正直ボクらも驚いています」の言葉で、記者会見は「公開げんか」の場に変わった。当初この日の会見で、各球団トップは1球団3000万円ずつの分配金遅延による経営危機の打開策を訴える予定だった。だが、会見前の会議に中村代表が急きょ参加し「すぐに分配金を支払う。2、3社が援助を申し出て資金調達のめどはついた」と説明した。しかし、会見では「各球団との見解の相違」を繰り返し、報道陣からの追及には「これは茶番だ ! 」と居直り、「分配金はなかった。スポンサー収入が当初の想定とは2億円ぐらい違った」と釈明した。

 加盟球団が黙っていなかった。紀州以外の3球団は選手に今月分の給料を払うめどすら立っていない。神戸の広田社長は「努力したけどだめだったとか言ってくれればいいことなのに。彼の話を聞いて、非常に悔しい」と怒りで涙ぐんだ。三重の壁矢社長は「ちゃんと説明してくれんと、我々全員が世間に笑われてるんだよ」と隣の中村代表を一喝した。

 その間に木村代表は他の球団トップと耳打ちを始め、突如「この4チームは関西独立リーグを脱退します」と宣言。これには壁矢社長が「三重はどうなんの !? 」と声を張り上げた。報道陣から「別の席でもう1度話し合って」と提案がなされ、再び協議。1時間超の話し合いの結果、中村代表が経営する「ステラ」はリーグから撤退することが決まり、現名称のまま加盟球団の合議制で独自運営に切り替えることが決まった。新たなスポンサーを求めることになるが、深刻な経営危機を背負ったまま再始動する。【堀まどか】

 [2009年5月21日9時26分

 紙面から]ソーシャルブックマーク