プロ6年目の広島尾形佳紀内野手(30)が16日、2年ぶりに1軍に合流した。マツダスタジアムでの練習に参加。代打の切り札として期待されており、17日の楽天戦(三次)で07年以来となる1軍昇格を果たす。05年には開幕スタメンに名を連ねたが、古傷の右ひざ靱帯(じんたい)を断裂。故障の影響もあり、08年は1軍でプレーできなかった。自身も「最後だと思ってやっていた」と心境を明かす。今季は野球人生の岐路に立つが、ついにチャンスが巡ってきた。

 ユニホームの下に隠れた右ひざはサポーターで固定されている。夏のようなマツダスタジアム。度重なる故障禍に悩まされてきた尾形が、17日の楽天戦を前に1軍に帰ってきた。右翼で守備練習を行い、軽やかにスローイングを繰り返す。天然芝に覆われる緑のフィールドで動き回った。

 尾形

 久しぶりなので、思い切りやろうと。(2軍戦では)外野を守ったり、DHが多かった。足の状態は、そんなに痛みもなく、普通に走れたりしていた。

 07年以来、2年ぶりの1軍復帰に声をはずませた。無理はない。昨季は無縁の世界だった。日大時代に右ひざ前十字靱帯(じんたい)を痛めて手術した。社会人ホンダでもメスを入れ、さらにプロ入り後も05、06年に執刀。全力プレーする上で、右ひざの古傷がネックになっていた。自身も振り返る。

 尾形

 ケガばかりして、ひざのことばかり考えていた。技術どうこうよりも、体の状態とか、ケガのことを考えていた。本当に上がれると思ってなかったですね。今年に入って、最後だと思ってやっていた。ケガしたら仕方ないなと…。

 チームは勝率5割ラインを上下する。尾形の勝負強さが買われ、抜てきされた。ブラウン監督は「貴重なピンチヒッターだよ。彼のバットで勝ちをつかめればいい」と期待した。05年には開幕オーダーに名を連ね、負傷する5月下旬まで打率3割3厘、6本塁打をマークした実力者だ。07年8月24日巨人戦ではサヨナラ弾を放ち、うれし涙を流したこともあった。紆余(うよ)曲折をへて、1軍に返り咲いた。

 尾形は笑顔で言う。「(1軍でのプレーに)ドキドキしている。ワクワクしている。いまやれることを一生懸命やるだけです」。何度も絶望を味わい、地獄を見た。ようやく訪れたチャンス。不屈の男が一世一代の勝負に挑む。【酒井俊作】

 [2009年6月17日11時6分

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