阪神鳥谷敬内野手(28)が、最後の修羅場を心待ちにした。7日広島戦を2日後に控えた5日、甲子園での練習に参加。残り3試合で決着を迎える4位ヤクルトとのクライマックスシリーズ(CS)争いについて「気持ちが入ってできるからいい」と歓迎した。すでに個人成績は眼中になく、チームの勝利が最優先。CS争い最後の直接対決で、しびれるようなゲームを期待した。

 淡々とした口調に、静かな闘志がにじんだ。141試合を終えても決着しないヤクルトとのサバイバルマッチ。本来は消化試合になるはずだった秋口にギリギリの戦いが続く。鳥谷は「ここまできたらあれこれ考えても仕方がない。これだけ(試合を)消化しても、気持ちが入ってできているからいい」と言った。

 3位を確保して、道が続くと信じている。17日から始まるCSを前に、緊張感たっぷりの試合の連続。07年にCS制が導入されてから、出場チームは実戦ブランクへの対策を練ってきた。しかし現在の状況で勝ち抜けば、ポストシーズンにも違和感なく入れる。鳥谷はCSも見据えた上で「いいんじゃないですか」と、ヤクルトとの修羅場を歓迎した。もちろん自分たちが最後に生き残る構えだ。

 すでに個人記録は眼中にない。7月28日の後半戦開始から打撃が復調し、プロ6年目で初のシーズン20本塁打に王手をかけている。真弓監督からはことあるごとに「20本台を打つ力はある」と期待されている。オフには打率3割、20本塁打を目標に掲げていた。

 現在は9月19日広島戦の19号から12試合にわたってノーアーチ。しかし焦りはない。この日は「僕は本当にホームランバッターじゃない」と同じセリフを3回繰り返した。その上で「20本打った経験があれば『狙います』というけど、そうではない。出ればいいなぐらいです」と笑った。

 本塁打数よりもこだわった打率3割にも執着はなくなった。「(率も)あまりない。それよりも、チームの勝利のために1本でも多く打てればいいと思っています」ときっぱり。今大切なのは、3回に1度という確率論ではなく、白星を引き寄せる1本のヒットだ。

 昨季は巨人に歴史的な逆転Vを許した。大きなリードをひっくり返された経験があるだけに「相手の方が嫌でしょう」と最大13・5ゲーム差を失ったヤクルトの心理を分析した。この日、ヤクルト-巨人戦が雨天中止のために1ゲーム差は変わらず。CS進出決定は最短で8日ヤクルト戦となった。鳥谷が直接対決でライバルをたたき、白黒はっきりさせる。

 [2009年10月6日11時10分

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