ルーキー左腕が秘密兵器になる!

 広島のドラフト5位ルーキー伊東昂大(こうた)投手(18=盛岡大付)が宮崎・日南キャンプ初日の13日に1、2軍合同練習でアピールに成功した。ブルペン投球を偵察した中日スコアラーは「今中みたい」と伝説の沢村賞左腕にたとえて警戒するほど強烈なインパクトを与えた。今後の紅白戦などで登板するチャンスも浮上。西武の黄金ルーキー菊池雄星と同じ岩手県の盛岡大付から入団した左腕が、楽しみな存在になってきた。

 伊東の投じたボールが、ミットに小気味良い音を立てて収まる。ストレート、カーブ、スライダー、スクリューにフォークまで、全持ち球を駆使して71球を投げ込んだ。

 1、2軍合同練習は、2軍スタートだった伊東にとって唯一にして最大のアピールチャンス。大野ヘッド兼投手コーチら1軍首脳陣も見守る中だったが「全然緊張はしなかった」と強心臓ぶりを発揮、最後はマウンドでほえながら投げた。「いつも通り投げられました。体も初日はきつかったけど疲れても取れて今日は体が軽かったです」と笑顔を見せた。

 全国的には無名のドラフト5位左腕の投球に敵チームも注目した。中日善村スコアラーは思わず「これはいい報告書が書ける」とつぶやいた。「ボールに角度があるし、しかもすべて低めに来る。ボールのばらつきも少ない。テークバックは今中(慎二=元中日)に似ているかな」と今後もマークすべき選手としてインプットした。

 大野ヘッド兼投手コーチも「今日はちょっとはりきりすぎてバランスを崩すこともあったけど、しっかり腕を振って投げていた」と高く評価。この日は伊東のほか、青木勇、宮崎、同じ新人のドラフト3位武内久士(22=法大)や2年目中田の6人が2軍から呼ばれてブルペン入りしたが、同コーチはそのメンバーから選抜し、今後の紅白戦やシート打撃などに登板させる考えだ。

 アピールに成功した伊東は今後、1軍相手に投げるチャンスが広がった。「もしチャンスをもらえるなら、ありがたいです。だからといってなにか特別に変えることはないが、今のベストを出せれば」とルーキーは初々しく言った。

 高校時代は同じ岩手県の雄星(西武)と比較され、いやでも意識してきた。ライバルはキャンプでも連日、注目されているが、伊東は「興味ないです」とあえて無関心をよそおった。甲子園で実績を残した同世代の選手の陰に隠れていた男が、今後“コイの秘密兵器”となるかもしれない。【高垣

 誠】

 [2010年2月14日10時18分

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