<巨人4-2横浜>◇21日◇京都

 ガッツが京都で復活した。前戦まで自己ワーストの21打席無安打だった巨人小笠原道大内野手(36)が、横浜戦で7号ソロを含む4打数4安打2打点と大爆発。勝利の立役者となった。チームは56年ぶりの京都開催試合を制し、2連勝で2位中日との差を2ゲームに広げた。

 無数のフラッシュ、歓声を全身に浴びた。お立ち台に上がった小笠原の声は自然と上ずった。「突然舞い降りたような感覚です。(4安打の活躍を)忘れないでください」。ソロ本塁打を含む4安打2打点。22打席ぶりの快感に、寡黙な男の口から本音がぽろりと出た。

 呪縛(じゅばく)を解く一打だった。1回無死一、三塁、寺原の初球を右前に打ち返した。スコアボードには6試合ぶりとなるHのランプが点灯。「チャンスだったんで、積極的にいきました。久しぶりに仕事ができました」。プロ入り最長の21打席連続無安打。この試合まで通算1857安打を積み重ねてきた男にとっても、長く険しいトンネルだった。

 劇的に変化した。3回は右前打でチャンスメーク。5回には内角のスライダーを右翼席にライナーで突き刺す7号ソロ本塁打を放った。7回には右前打で出塁し、4打数4安打の固め打ち。「つきもあったからね」と謙遜(けんそん)したが、絶不調から絶好調へと一気に調子を上げた。

 1月の宮崎自主トレ。実松とともに新たに高卒4年目の田中が弟子入りを志願してきた。ウオーミングアップ中だった。「ちょっと待て」とランニング中の田中を呼び止めた。目を見つめ、一言だけ言った。「単純なことを継続することは難しいんだよ」。ただのランニングも試合へとつながる。当たり前のことを継続する重要性を伝えたかった。

 「その時、その時にできることをやっていく」姿勢を貫いた。午後2時過ぎ。バット片手にグラウンドに現れた。早出特打をするためだった。ティー打撃では右打ちで修正に励むなど、不振脱出へもがいた。「打てる時もあるし、打てない時もある。準備だけはしておこうと」。田中に伝えたプロ精神を体現した。

 56年ぶりの京都で快勝。「勝ち試合を見せられて良かった」と安堵(あんど)した。「また明日も同じように。1球に全神経を集中してやっていきます」と締めた。バスに乗り込む小笠原の顔はすでに勝負師に戻っていた。【久保賢吾】

 [2010年4月22日9時14分

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