広島は横浜戦(横浜)で執念を見せ、9回に最大4点差を追いついたものの、最後はサヨナラ負けを喫した。それでも野村謙二郎監督(43)が「フィオに当たりが出てきて収穫だ」と話すなど、打線の反発力に手応えをつかんだ様子。フィオ外野手(27)や天谷宗一郎外野手(26)に本塁打が飛び出すなど、不調だった主力が上昇気配を示した。5位に転落したが、打線のピースがそろい、反攻態勢を整えた。

 期待されたポイントゲッターが、ようやく目を覚ました。1点を追う土壇場の9回。1死満塁の同点機でフィオに打席が巡る。横浜守護神山口の速球を引っ張ると一、二塁間を破る。同点タイムリーで存在感を示した。助っ人は「みんなが回してくれたから、しっかり準備しようと思った。ああいうところで打つのがいい打者だから」と振り返る。開幕5番を張った男がようやく本領を発揮した。

 豪快な弾道が復調の合図だった。2回1死。横浜先発寺原の内角カットボールを強振すると、瞬く間に右翼席へ。今季2号ソロ弾で先制した。4月17日の中日戦(マツダ)で自打球を当て「右膝蓋骨(しつがいこつ)骨挫傷」で2軍に降格していた。実に4月14日のヤクルト戦(マツダ)以来、20日ぶりの安打だった。長らく打率は1割台だったが、今季2度目の猛打賞もマークし、2割6厘にアップ。普段は球場に流れるBGMに乗せて鼻歌を歌う陽気な助っ人が、グラウンドでも明るさを取り戻した。

 この日は終盤にコツコツと反撃し、試合を振り出しに戻したが最後はサヨナラ負け。それでも、野村監督は「フィオに当たりが出てきたのは良かった。チャンスで打ってくれたし、ああいうところで本来打つべき助っ人だから。収穫というか、期待したい」と評価した。

 フィオだけではない。3番の天谷も久しぶりの快音を発した。7回に牛田の速球をとらえ、右翼席に2号ソロアーチを運ぶと、9回には1死後に右前打で二盗も成功。闘志たっぷりのプレーで意地を見せた。

 4月30日の中日戦(マツダ)以来、21打席ぶりの安打を放った天谷は「そんな簡単に(良い感覚を)つかめるものではない。いいキッカケにはなったと思う」と言う。試合前練習では約50分、横浜スタジアムの室内練習場で特打を行い、大粒の汗を流した。3日横浜戦では、まったくタイミングが合わず、3度、外角球に空振り三振を喫した。それでも辛抱強く起用する指揮官の思いに応えた。

 黒星がついたが、4点差を追いつくしぶとさも出てきた。野村監督は「すべて手を尽くした。内容の濃い試合だからこそ、勝たないと」と振り返る。再び5位に転落したが、視線は前を向いていた。【酒井俊作】

 [2010年5月5日10時55分

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