<日本ハム1-0楽天>◇8日◇函館

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)と楽天岩隈久志投手(29)が、壮絶な投げ合いを演じた。両エースは函館でのデーゲームでそろって先発。ともに持ち味を凝縮した投球で譲らず、9回を無失点で降板した。2人の直接対決は、これで通算2勝2敗1分け。ともによきライバルと認める「平成の名勝負」に迫った。

 一目置く先輩右腕、岩隈に導かれ、ダルビッシュが驚異の才能の一端を見せた。9回を6安打無失点、今季6度目の2ケタ11奪三振。「岩隈さんがゴロが多いから、見ている人がつまらないと思って三振を狙いにいきました。そういうことにしておいてください」と、ジョークを交えて回想した。

 見た目の剛腕ぶりと対極にある柔軟な思考がカギだった。一番の特長、試合の中での修正能力が秀でていることを証明した。試合序盤は開幕から今季の決め球の1つであるフォークの制球に、やや苦しんだ。

 ◆シーン(1)

 5回1死二塁で9番西村の6球目がワンバウンドして暴投で四球。続く聖沢の5球目も同じような暴投で二、三塁とピンチを広げた。連続三振で切り抜けたが、最大の難局を招いた。暴投はいずれもフォークだった。

 あっさり過去を捨て、断ち切った。「(三振を)狙いにいったけれど、すんなりいくとは思わなかった」と会心の結果に、後ろ髪はひかれない。6回以降フォークは1球だけ。100キロ前後のスローカーブとスライダーがフォークに代わる、変化球の軸になった。

 ◆シーン(2)

 8回1死から鉄平を見逃し、山崎を空振りで連続三振。ボールゾーンの高さから低速カーブで仕留めた。1発が怖い2人を、大胆に沈めた。

 制球を間違えば、危険球になりやすいが、確信があるからこそなせる業。「相手の狙いを外すことができた。岩隈さんからはなかなか打てないので点をやらないことを考えた」。ゲームメークするための引き出しの多さ。多彩な一面が、至極の競演に結集されていた。【高山通史】

 [2010年5月9日9時15分

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