<巨人7-6日本ハム>◇4日◇東京ドーム

 巨人が劇的な今季初のサヨナラ勝ちを飾った。1点を追う9回1死一塁、坂本勇人内野手(21)がバックスクリーンへ逆転13号2ランを放った。若武者が自身4度目のサヨナラ打で、敗戦の危機を救った。初めて2番に入った高橋、阿部が2発、小笠原の13球団弾など空中戦で、日本ハムをうっちゃった。

 坂本のために舞台が用意されているようだった。1点を追う9回1死一塁、サヨナラのチャンスで打席が回ってきた。高ぶる感情を抑え、冷静にバッテリー心理を読んでいた。「尚広さんがランナーに出て、真っすぐでくるだろうなと。振り負けない気持ちで」。3球連続けん制後の1球目、狙い通りの直球をプロ入り初の中堅バックスクリーンに運んだ。原監督に「けん制が続いた中で、勇人の集中力は見事でした」と言わせるほど、劇的な13号逆転サヨナラ2ランだった。

 ホームベース上にはチームメートの笑顔の輪。「よっしゃー」。先輩たちの荒々しい祝福に、身を委ねた。ウオーターシャワーを全身に浴び、気づけばユニホームの上着は放り出されていた。自身4度目のサヨナラ打は、チーム今季初のサヨナラ勝利。「この瞬間があるから、普段の練習があるんだなぁと思います」。ベンチでユニホームを整え直して上がったお立ち台で、しみじみと語った。

 華々しい活躍の陰で、体には異変が起こっていた。5月末に39度の発熱。同28日の練習は大事をとって休養した。「全然大丈夫」と受け流したが高熱の影響で関節がゆるみ、感覚に微妙なズレが生じていた。同31日の練習は休養日だったが、ジャイアンツ球場で休日返上トレーニング。「休んだ分は取り戻しておかないと」とウエートトレーニング、マシン打撃で感覚を取り戻した。

 53試合で13本塁打。右方向、中堅へ1本ずつアーチをかけた。打撃技術の向上も当然だが、パワーの源は胃袋にある。5月末の試合後、山口と焼き肉店へ向かった。深夜だったが“3人前”の肉に、締めで大盛りの肉丼を注文。山口より1杯多く、平らげた。梅雨が近づき、疲労もたまる時期。「去年より、確実に食べてますね」。中堅バックスクリーンへの初本塁打は、必然だった。

 この日は口蹄(こうてい)疫による被害を受けた宮崎県の畜産農家を支援する活動がスタート。「いいプレーを見せることで勇気づけられれば」と力を込めた。巨人の“サヨナラ男”と言えば阿部。“新サヨナラ男”の襲名を感じさせるど派手な1発だった。【久保賢吾】

 [2010年6月5日9時13分

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