<巨人2-8広島>◇7日◇ひたちなか

 マエケンが「Gキラー」を襲名!

 広島前田健太投手(22)が、茨城・ひたちなかでの巨人戦で7回2失点の力投を見せ、ハーラートップタイの今季11勝目をマークした。前回登板の1日に続いて巨人戦2連勝。負ければ自力優勝の可能性が消える同様の状況で、またも踏みとどまった。地方球場ではプロ初白星のおまけ付き。まさに全国区の投げっぷりだった。

 鬼の形相だった。5回無死一塁。送りバントに失敗した前田健はベンチへの戻り際、バットを地面にたたきつけるしぐさを見せ、悔しさをあらわにした。7点をリードしている展開。それでも妥協はない。「打撃もしないといけない。9番に入っているので」。1球1打席に全身全霊を尽くすのが、マエケンの身上だ。

 試合前から小雨が降り続き、グラウンドはぬかるんだ。そんな悪天候ですら、味方につける。2回1死一塁。長野に右前打を浴びたが、一塁走者の阿部が二塁を回ったところで柔らかい走路に足を取られて転倒。走塁死で2死となり、労せずピンチを脱した。前田健が「あれは大きかった」と振り返るように、すっかり持ち直した。3回には自らタイムリーを放ち、リズムに乗った。4回2死一塁では今季28本塁打の阿部を外角速球で空振り三振に抑えるなど勝負どころでは強打者に力で挑みかかった。

 「先に点を取ってもらって、最初から飛ばしました。今日は配分を考えずに行きました。真っすぐが良かったと思います」。直球こそが、今季の前田健を支える「生命線」だ。鋭いスライダー、緩急をつけるチェンジアップを生かすためにも欠かせない軸球。好不調を推し量る1つのバロメーターは、その球筋だ。「自分で投げてみて落ちなければいい。落ちるときが悪いときですから。汚い軌道のほうが打ちにくいかもしれないけど、いまはキレイな回転の真っすぐを投げたい」。理想として真っ先に名前を挙げるのが阪神藤川球だ。「テレビで見てもすごいです」。あらゆる投手をヒントにして、レベルアップに努めている。

 この日は負ければ自力優勝の可能性が消える1戦だった。前回登板の1日に続いて、同じ状況で巨人に連勝。自己ベストを塗り替える11勝目を挙げた。「ここから1個1個。僕にとって初めての体験なので」。広島では04年黒田以来の2試合連続巨人戦完投勝利こそ逃したが、前田健がエースの本領を存分に発揮した。【酒井俊作】

 [2010年7月8日8時31分

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