<楽天4-2日本ハム>◇17日◇Kスタ宮城

 楽天山崎武司内野手(41)が、日本ハムのダルビッシュ有投手(23)から逆転の16号3ランを放った。1点を追う4回1死一、二塁、初回に国内自己最速の156キロをマークしたダルビッシュの直球を中堅右に運んだ。ダルビッシュから放った第1号は、40歳代選手として初めて、楽天の日本人選手としても初めての1発。6月13日の交流戦ヤクルト戦以来、約1カ月ぶりに描いた放物線には、生粋の飛ばし屋の思いがぎっしりと詰まっていた。

 山崎は「長谷部、これで足りるか」と出迎えの先発左腕に言った。そのまま三塁側ベンチのシートをどしっと3個占拠し、扇風機で頭を冷やした。その立ち居振る舞いを許すだけの価値が逆転3ランにはあった。

 打った相手がダルビッシュ、しかも直球だった。初回に自身国内最速の156キロをマークしていた球界最高峰の直球。「内に入ってきた」149キロを中堅右まで持っていった。「直前のスライダーを自分のタイミングで空振りできたのが要因。『スライダー待ちか』と思わせる、いい空振りだった」。伏線を張り、次の3球目を仕留めた。

 闇を抜けるには申し分ない1カ月ぶりの16号だった。不惑を迎え「足、腰、背中の違和感は疲労。自重するのはつらいがグッと我慢」と寄る年波を悟った。同時に「どこか痛くて試合に出られないのは、絶対ダメだ」と譲れない矜持(きょうじ)もあった。調子が落ちても打ち込みができない。使うのは頭だった。寝たいだけ寝る信条を破り「徹夜で映像を見た。気付いた」と血走った目で明かした。

 山崎

 オレは手足をゆったり、大きく動かしてタイミングを取る。その動きが小さくて、かつ腕と下半身が連動していなかった。

 スタメン落ちした7月2日深夜、単身赴任中のホテルで見つけた原点だった。初動で立ち遅れないよう、練習から左足かかとを大きく上げ構えた。また割りができる公称100キロ。スパイクの左足後ろの歯を抜き、強制的に巨漢を前重心で支えた。翌3日に2安打した相手はダルビッシュだったが、まだ不満だった。高速ライナーが飛ぶようになっても「打球が上がらないのはダメ」と不本意だった。幾度も放物線をかけ見つけた「ほんの少し詰まっていて、かつ緩やかなラインドライブがかかっている」理想。この日の本塁打こそ「久々の感触」で、求めていた快感だった。

 いつまでもアーチに固執する。「開き直る。打率1割台でいい。30本打てれば、それでいい」とまでほえるのには、訳がある。お立ち台で「何にしても、長谷部に勝ちをプレゼントできて良かった」と言った。一振りで試合を決める。そのために2年5億円の契約をもらった。「後がないんだ。ダルから打てて自信が持てた。いい思い出になった」。大いに笑わせ、胸の奥に持ち続ける責任感をひた隠した。【宮下敬至】

 [2010年7月18日8時42分

 紙面から]ソーシャルブックマーク