<日本ハム10-4楽天>◇6日◇札幌ドーム

 中田がダルビッシュを救った。日本ハム中田翔内野手(21)が楽天戦の6回にライナーの左越え同点5号ソロ、7回には2打席連続のダメ押しの中越え3ランを放った。先発ダルビッシュ有投手(23)が4回までに4失点する苦しい投球だったが、弟分の中田の2発が5年連続2ケタ勝利を運んできた。ヒーローインタビューではお立ち台に初めてそろって上がった。中田はプロ初アーチから9戦6発で、チーム浮上の原動力になってきた。

 きっかけはダルビッシュからのひと言だった。「ホームランを打ってこい」。1点を追う6回1死。楽天栂野の外角への初球ストレートをはじき返した。中田本人すらも入らないと思ったライナーが、スタンドの向こう側へ消えていった。左中間への同点5号となった。この1発で流れが変わった。

 さらに2点リードの7回2死一、二塁の第4打席。やはりダルビッシュから本塁打指令を受けて打席に入った。今度は青山の真ん中高めの124キロスライダーをバックスクリーン左へ運んだ。ダメ押し3ランで試合を決めた。大阪桐蔭2年だった06年夏の甲子園で放った推定140メートルアーチと同じ軌跡。4年前と同じ8月6日だった。「1、2打席目はあっけなく三振してしまったので、切り替えて思い切っていこうと思いました」と言った。

 三塁側ベンチ前では、両手を目いっぱい広げたダルビッシュが待ち受けていた。3ランが飛び出した瞬間、ベンチで思わずバンザイをしていた。歓喜で顔をくしゃくしゃにした中田を力いっぱいハグした。逆転劇での5年連続、10勝目をフルスイングでプレゼントしてくれた後輩に感謝した。お立ち台では念願だったツーショットが実現した。「兄貴分的な存在」と話すダルビッシュから「投球内容?

 ひどかった。今日は中田さんのおかげで勝てたので良かったです」と持ち上げられた。隣の中田は「今日は特別うれしかったですね。3年間怒られっぱなしで…。今日も褒めてもらえるなと思ったら、2本で満足するなと言われました」とはにかみながら言った。

 ヒーローインタビュー直後のベンチ裏。やはりダルビッシュは厳しい愛情表現で祝福した。「試合前のアップも何度言ってもやらず…。(入団から)3年間、働いていないんで…。(プロ野球新の)56本打つまで認めません」と幸せそうに笑いながらも、バッサリ斬った。

 中田の2戦連発、2打席連発、1試合4打点の初物ずくめで、チームは3連勝で再び貯金生活に入った。梨田監督も「今日は中田の本塁打。チームにも、ダルにも勇気を与えた」と絶賛した。だが、ダルビッシュの56号指令を聞かされた中田は満足していない。「まだまだですけど、今日は勝利に貢献できてよかったです。ダルさんの愛情表現だと思って、その数字を目標に頑張りたい」。7月20日ロッテ戦のプロ初アーチから9戦6発の驚異的ハイペース。中田のバットが、パ・リーグに風雲急を告げる。【本間翼】

 [2010年8月7日8時17分

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