<西武4-3ソフトバンク>◇18日◇西武ドーム

 絶対にあきらめない。首位攻防戦での痛すぎる敗戦の中、ソフトバンク江川智晃外野手(23)が奮闘した。体調不良などで欠場したロベルト・ペタジーニの代役として「9番左翼」で今季3度目の先発出場。プロ2度目の猛打賞となる3本の二塁打を放ち、9回の守りではブラウンのフェンス際への大飛球をジャンプしてスーパーキャッチ。6年目のスラッガーがV争いでのラッキーボーイとなるべく、首位攻防第3ラウンドでも暴れまくる。

 痛すぎる敗戦でも、7年ぶりVを予感させる一打だった。1点を追いかける9回。1死から打席に入った江川が、西武守護神シコースキーの内角変化球を迷いなく振り抜いた。鋭い打球は左翼線へ。同点の走者として二塁へ到達しガッツポーズ。5回と7回にも二塁打を放ちいずれもホームを踏んだ。3安打目は、追い込まれていたベンチを大きく勇気づけた。

 江川

 チームが勝ってくれればよかったんですけど…。守備のこともあったし、何とか取り返したかった。

 必死だった。首位攻防戦ということももちろんだが、それどころではなかったのかもしれない。5年目だった昨季までに1軍出場はわずか27試合。昨オフには背番号が「8」から「43」へと変わった。勝負の年と位置づけた今季も、先発出場は3度目だった。

 ミスはあった。1点リードの4回。1死二、三塁から西武平尾が放った左前打を処理したが、送球をあせり、ボールは自身の数メートル前でワンバウンド。無理な突入に見えた二塁走者ブラウンまで生還させ、逆転を許した。「あわて過ぎだね、肩も悪くないんだし…」と井出外野守備走塁コーチは話した。それでも、すぐに取り返す。8回の左翼守備ではブラウンの大飛球を、フェンス際でジャンピングキャッチした

 それでも、もっとチームに貢献しなければ気が済まない。1軍昇格したばかりの12日のオリックス戦で、延長12回に代走出場し、けん制死した。チームは5時間を超えるゲームで痛すぎる引き分け。責任を一身に背負い込み落胆した。それでも、秋山監督は「何やってんのや」とやさしい笑顔で励ましてくれた。

 19日の同カードも、この日欠場したペタジーニの出場は微妙。江川が先発する可能性は高い。あの励ましの笑顔に応えるには、自身のバットでチームのVに貢献するしかない。【倉成孝史】

 [2010年8月19日11時16分

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