<オールスターゲーム:全セ9-4全パ>◇第1戦◇22日◇ナゴヤドーム

 高卒11年目でオールスターに初出場した全セの3番ヤクルト畠山和洋内野手(28)が、勝ち越し3ランでMVPゲットだ。同点に追い付いた直後の5回1死二、三塁から、初球を左翼席に豪快に運んだ。ウラディミール・バレンティン外野手(27)も2ランを放ち敢闘選手賞を獲得した。前日のフレッシュオールスターでは2年目内野手の荒木がMVPを受賞。球団史上最多8人が出場した夢の球宴で、セ界首位を走る勢いがさらに加速した。

 高々と掲げた右手の先に、愛する家族が待っていた。同点に追い付いた直後の5回1死二、三塁。球宴初出場の畠山が、日本ハム武田勝のスライダーを振り抜いた。打った瞬間、一塁側ベンチに向かってガッツポーズ。打球は左翼席「前列」に飛び込んだ。「恥ずかしい話なんですが、ガッツポーズはしちゃったけど、思ったより飛んでなくてびっくりした。中段ぐらいかと思ったんですけど。あれで入ってなかったら恥かくところでした」と苦笑い。オールスター仕様に髪を短く刈り込んでも、トレードマークのもみあげから続くヒゲは健在。豪快に笑って、賞金300万円を受け取った。

 一塁側ベンチの上からは、元モデルの美里夫人と、夫人の家族が見守っていた。出場が決まると、冗談交じりに「300万円取ってきて」と激励された。ナゴヤドームでの練習中から「1発狙うぐらいの気持ちで振っていきたい」と誓った、「予告弾」だった。

 岩手・花巻出身。東日本大震災では幸い親族などは無事だったが、専大北上高野球部のチームメートの家が流されるなどの被害があった。Kスタ宮城で開催される24日の第3戦では全セの4番を務める予定。ヤクルト野手では92年の広沢以来19年ぶりになる。「少しでも元気、勇気を与えられようなプレーがしたい。それだけの責任がある」と引き締めた。

 リーグ首位に立つチームの4番を守り続け、前半戦で11本塁打を放った。これでシーズン中から続く本塁打を打てば負けない不敗神話を“10試合”に伸ばした。賞金300万円の使い道は「嫁と2人で何か記念の物を買いたい」と笑った。姉さん女房の美里夫人の存在が、2軍でくすぶっていたスラッガーを目覚めさせた。夢だったオールスターで、これ以上ない恩返しを果たした。【前田祐輔】